あれ?遭難していないのに なぜピカピカ光っているの?

日本語で『非常位置指示無線標識』というEPIRB (Emergency Position Indicate Radio Beacon)の話です。

EPIRBが船舶に導入された当初は誤発射が非常に多く、問題となりました。その防止策として、船橋横に設置しているEPIRBを架台から取り外しただけでは遭難信号を自動発射しないタイプに改良されました。誤発射防止機能として海水に浸からなければ、たとえ取り外しても作動しないようになりました。

一昔前のタイプは固定台から取り外すと同時に遭難信号を発射しました。ですから、もし本船がまだ古いタイプのEPIRBを装備しているならば、整備で架台から取り外すときは、電源を必ず「Off」にしてから本体を取り外さなければ、誤発射する可能性があるので、十分注意して下さい。

私の苦い経験です。本船がドック中に突然会社から電話があり、「海上保安庁が本船の遭難信号を受信している。何かあったのか?異常はないか?」との一報が入りました。寝耳に水とはこのことです。もちろん心当たりはありません。直ぐに船橋ウィングへ行きEPIRBを確認してびっくりです。EPIRBの上部のランプがピカピカ光って信号を発射しています。調査した結果、ドック作業員が足場資材を運ぶときにEPIRBに資材をぶつけて、架台から少し外れたため、遭難信号を発したのでした。このような落とし穴があるので、ドックへ入るときはEPIRBをあらかじめ取り外しておいたほうが良いでしょう。もう一つドック前にEPIRBを取り外して格納するもっと重要な理由があります。それは盗難防止のためです。


続けて、「VDR(Voyage Data Recorder)」の話もしましょう。

日本語で「航海情報記録装置」ですが、皆さんは「VDR」のほうが聞きなれているでしょう。SOLASにより2002年7月1日以降の新造船に搭載が義務付けられました。飛行機のブラックボックスと同じように、事故があった場合には事故調査の重要な証拠データとなります。12時間分のデータが記録され、データが満杯になると上書きされます。記録されるデータの種類は数多く、日時、船位、船速、船首方位はもちろん、船橋の音声、VHFの交信記録、レーダー映像まで記録されます。データーは下の写真のようなカプセルと船内にあるハードディスクの両方に記録されます。

ここで注意すべきことは、海難事故が発生したときは、SAVEボタンを押して記録を停止させなければいけません。停止するのを忘れて12時間経過すると肝心な事故当時の記録が全て上書きされて消えてしまいます。但し、何もないときにSAVEボタンを誤って押してしまうと、リセットはメーカーでないとできませんので、要注意です。また、VDRカプセルの機能として、海底6000mまで沈んでも30日間、水中音響ビーコンを発し続けて回収できる機能を有しています。

船橋にあるカプセルがLife Raftのように船が沈んだときに自動的に浮き上がると思っている人はいませんか?実際は船と共に沈んでしまい、浮き上がってきません。以前、乗船したときに航海士にVDRのハードディスクはどこにあるのか尋ねると誰も知りません。これではいざというときに間に合いません。VDRの情報記録場所を確認しておきましょう。

注意
VDRの機能については執筆当時のものです。乗船した船のVDRの機能については必ずご自身でご確認ください。

GMDSS要件でもある「SART(Search And Rescue Transponder):捜索救助用レーダートランスポンダー」は今や当たり前のように船橋付近に装備されています。SARTはX-Band RADARに反応して電波を発射しますが、S-Band RADARでは反応しません。

また、SARTはX-Band RADARが8マイルの距離まで近づくと、それに反応してスイープ波を12個発射します。(下写真は本船上でのテストなので円状となっていますが)SARTからの電波を受信したレーダーの画面上には12個の点が表示されます。SARTは連続4〜5日間、使用可能です。

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