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あ~こがれの~氷海航行 : 「氷海航行訓練」の話

おそらく経験した人は少ない『氷海航行訓練』の話です。

昔、ロシアのナホトカにあるPRISCOという船会社のトレーニングセンターで1週間の氷海航行訓練を受講しました。受講者は私を含めて船長3名でした。カリキュラムは午前中が先生の講義で、午後が操船シミュレーターを使用しての氷海航行の実習です。トレーニングセンターには操船シミュレーターが3台あり、1台は本格的な操船シミュレーターで残りの2台は簡易型です。

これら3台が同じ仮想空間で操船できるインターラクティブな操船シミュレーターです。この操船シミュレーターを使って、3隻が船団を組んで氷海航行する訓練を行いました。1名は砕氷船の船長役で、先導して氷を割って他船が航行可能な航路を作ります。また、他船が氷に閉じ込められた場合には、救助に赴きます。残りの2名は砕氷船に続いて航行する大型船の船長役です。

講義する先生は砕氷船に乗船経験があるロシア人です。氷海航行の貴重なノウハウを有しているのは、やはり北欧、ロシア、カナダ等の北極海に面した国々です。残念ながら日本の船会社には氷海航行に関するノウハウはそれほど多くはありません。操船シミュレーターのスクリーンに当たり一面が氷で覆われた真っ白な映像が現れて、船首で氷を割って進むと、バリバリ、ゴウゴウと臨場感のある氷を割る音が聞こえてきます。

船で氷の厚さを知る方法は目視のみです。残念ながら氷の厚さを計測する機器は開発されておらず、最も確実な方法は、氷の色による見極めです。5cm以下の薄い氷は暗い灰色をしており、厚くなるにつれて白色が増してきます。ですから、氷海操船のポイントは灰色の氷に狙いをつけて、可能な限り薄い氷の海域を航行することです。あくまでも操船シミュレーターでの経験ですが、氷の厚さが30cm以上になると、船が氷に阻まれて進むことができませんでした。

午前中の座学では氷海航行に関する様々な理論を教わりました。当然のことながら、最も安全な航行は、操船する船を厚い氷に覆われた海域へ無暗に進入しないことです。砕氷船(Ice Breaker)が氷を割って作った航路を航行することが安全で確実です。先生は何度も繰り返して船の行き足を絶対に止めないようにすることが非常に重要であると言っていましたが、実際に私達の操船する大型船で行き足が止まる可能性のあるような氷海を航行することはないはずです。

一般商船が氷海に閉じ込められたときのリスクを考えると、氷で覆われた海域を航行することはとても危険です。ちなみに、氷河の末端部が海に滑り落ちた氷山(Ice Berg)と海水が氷結した流氷(Drift Ice)・海氷(Sea Ice)を混同してはいけません。氷山は流氷の範疇に入りますが、まったく別物です。あのタイタニック号が衝突して沈没したように、船に甚大な被害をもたらす可能性があるので、氷山は絶対に避けなければいけません。氷山は大きいものでは直径数十キロにも及ぶ巨大な島と同じです。

せっかく氷海航行の訓練を受けたので、チャンスがあれば是非、氷海航行を体験したいのですが、なかなか機会は訪れることはありません。(後にLNG船で念願の氷海航行を体験しました。しかも、氷に行く手を阻まれ、行き足がなくなり停止するというとても危険な経験までしました。)

憧れの氷海航行

付け加えるとせっかく船乗りになったのだから引退するまでにマゼラン海峡も航行してみたいのですが、マゼラン海峡を航行する船舶に乗船する可能性は殆どないため、これも実現しそうにもありません。聞くところによるとマゼラン海峡を通峡した場合、その証としてパイロットから「マゼラン海峡の通航証明書」が頂けるとのことです。

3大運河もパナマとスエズは何度も通過しましたが、キール運河を通る機会は訪れていません。「マゼラン海峡航行」、「キール運河通過」の2つが私の実現していない夢です。

 

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