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航海当直 ア・ラ・カルト(特殊高速船・変針時のイメージ・外方傾斜・当直交代)

阪口泰弘阪口泰弘

言うまでもなく、『航海当直』は航海士にとって基本中の基本の職務です。それ相応に出来て当たり前、もしも、信用に足るだけの航海当直の技量を発揮できなければ、船長以下乗組員全員から航海士失格の烙印を押されてしまいます。その航海士の「Basic Skill」ともいえる航海当直について焦点を当て、いくつかの初歩的な話を紹介します。

特殊高速船

皆さんは水中翼船を右前方に視認したら、相手船を避けますか?それとも針路保持しますか?平成15年に改正された海上衝突予防法では「特殊高速船」というあらたな定義の船が規定されました。これは船舶技術の進歩により、超高速の船が将来的に出現し、通常の航法では安全な航行が維持できないことを想定したものでした。

特殊高速船の範疇に入る乗り物として地面効果翼機(WIG / Wing In Ground Effect Vehicle)という乗り物があります。WIGは水面ぎりぎりを飛行すると揚力が大きくなるという利点を利用した飛行機のような乗り物です。特殊高速船は水上航空機と同じく一般動力船を避けなければいけません。

私は30ノット以上もの高速で航行する上写真のような水中翼船もこの特殊高速船の範疇に入るものと思っていました。しかし、詳しく調べてみると、水中翼船は一般動力船と同じ範疇に入り、右前方に水中翼船を見た場合、本船が避航船となり相手を避ける必要があります。しかし、実際には大型船舶が水中翼船を避航できるかというと、はなはだ疑問です。また、特殊高速船を見たことがありませんので、何ノットで航走してどんな操縦性能なのか知りません。世界全体でもそれほど多くの特殊高速船は航行していないようです。

変針時のイメージ

私は変針するときに必ずイメージするようにしています。何をイメージするかというと、変針中、変針後の自船の位置、状態です。例えば右45度変針する場合、数分後に自船がどの辺りにいて、どの方向を向いて何ノットであるかを遠くの海を見つめながらイメージします。操船海域周辺にブイ等対象物標がない場合は、難しいでしょうが、出来る限り自船の航跡をイメージするのです。変針を点でとらえるのではなく、線(円弧)でイメージするのです。現時点だけでなく、1、2分後、そして10分後の将来予測が重要です。錨泊するときも同じです。潮流や風向きを考え、本船がどのような航跡を描いて錨地まで到着するか本船位置を前方に見える海面へ描いてイメージするのです。

外方傾斜

最近、乗船した長さ150mの比較的小さな船で、外方傾斜を経験しました。大舵を取って大角度変針すると見事に大きく外方傾斜しました。学校で習った内方傾斜、外方傾斜の現象を思い出します。まさに理論の実体感です。変針初期には舵の抵抗で内方傾斜するはずですが、それは体で感じない程ごくわずかで、その後は重心に作用する遠心力と船体に作用する水の抵抗のバランスにより船体は大きく外方傾斜しました。まさに理論通りの船体運動・船体傾斜です。

当直交代

若い航海士の中で、当直交代のために船橋に上がってきて、海図も見ずにレピーターコンパスに真っ直ぐ進み、間髪をいれずにいきなり前任者から引き継ぎを始める人がいますが、これはダメです。海図やレーダーで本船位置や周囲の状況を確認してからコンパスの前へ向かいましょう。船長は航海士のこの行為を見ていないようで、よく観察しています。若い航海士が基本に忠実にきっちりとやるべきことをやっていると船長にとっては非常に好印象です。

海図も見ずに当直交代する航海士には疑問を抱き、他の仕事も同じような調子なのかと要らぬ詮索をされ、技量を疑われ、次第に信頼を無くしてしまいます。管理会社によっては、コンパスの前で当直交代するのではなく、レーダーの前で周囲状況を確認しながら交代するよう具体的に指示している船もあります。

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