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デッキ上の散歩は自分のためだけではありません

船上での『健康管理』の話をいくつか。

私もそうでしたが、毎日のように甲板上をぶらぶら散歩する船長がいます。ただ、運動のために黙々と歩いているときもありますし、気分転換のために歩いているときもあります。しかし、甲板上の散歩の目的はそれだけではありません。自分自身の身体や精神の健康のためだけでなく、船体構造物、甲板・貨物機器、各種配管をチェックしながら歩いているのです。

ウィンドラスのブレーキが緩んでコントローラーストッパー部の隙間がなくなってアンカーがずり落ちていないか、ウィンチや舷梯のエアーモーターから油漏れがないか、パイプやバルブが錆びで朽ちていないか、Damperが空いたまま忘れられていないか、ワイヤーのグリース切れがないか、パイロットラダーのロープやステップが朽ちていないか等々を船長自らが歩きながら確認しているのです。

航海当直に従事している皆さんは毎日の業務に忙しいとは思いますが、C/Oにだけ甲板整備をまかせるのではなく、たまには甲板上を見回り、普段誰もが気がつかない不具合を探し出してみて下さい。たくさんの機器・設備がある甲板上には誰もが気がついていない不具合がきっとどこかに転がっているはずです。一つでも多くの目で点検することが不具合発見に確実に役立ちます。

特に乗船して月日が浅いときの新鮮な目が貴重なのです。数か月経つと、船に慣れてしまい、不具合にも鈍感になります。皆さんのフレッシュな目が意外な発見をするかも知れません。ちなみにインドネシア語で散歩のことを「ジャランジャラン」と言います。あの旅行雑誌の「じゃらん」はこのインドネシア語の「ジャランジャラン」から名付けられたそうです。

歩くことは健康のためによいことは間違いありません。外国人乗組員の中でもお腹が気になる人が休日にデッキを歩いている姿をよく見かけます。一昔前までは多くのフィリピン人船員が乗船時にほっそりした体型をしているのに乗船中に毎日ご飯をお腹一杯に食べて見る見る太って、でっぷりした体型になって下船していました。そして、休暇中にまたスリムな体型にもどり、次の船で再びご飯をたくさん食べて太ることを繰り返していました。乗船中に栄養を蓄えて、休暇中にそれを消費するというサイクルです。しかし、最近はフィリピン人船員も食文化が成熟したのか健康管理に気をつける人が多くなりました。乗船中に太り過ぎないようにダイエットをする人さえ出てきたことには私には驚きです。

健康と言えば、船では朝の作業前に乗組員全員でラジオ体操を行います。さらに船によっては昼の13時からも体操を行います。腰痛防止のために作業前の柔軟体操やストレッチは重要です。若い人でラジオ体操第2を知らない人がいました。昔は夏休みになると子供は早起きしてラジオ体操をするために近所の集会所に行ったものです。聞くところによるとラジオ体操は第4まであるそうですが、私は第3も第4も知りません。ラジオ体操第4は非常にマニアックでユニークな体操だそうです。体をほぐすための準備体操のはずが、ラジオ体操第4をすると体が引きつるとのことです。どんな体操なのかこの目で実際に見てみたいものです。

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