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航海当直 ア・ラ・カルト(レーダー・操舵号令)

阪口泰弘阪口泰弘

言うまでもなく、『航海当直』は航海士にとって基本中の基本の職務です。それ相応に出来て当たり前、もしも、信用に足るだけの航海当直の技量を発揮できなければ、船長以下乗組員全員から航海士失格の烙印を押されてしまいます。その航海士の「Basic Skill」ともいえる航海当直について焦点を当て、いくつかの初歩的な話を紹介します。

レーダー

衝突事故の約半数は見張りの不十分が原因です。そんな中で、最近、霧による視界制限状態における重大な衝突事故が数件、立て続けに発生しています。双眼鏡による視認以外の見張りの有効な手段は言うまでもなく、レーダーです。当たり前の話ですが、視界制限状態ではレーダーだけが頼りです。しかし、意外と航海士のやるべきことで、できていないのが、スコールや霧で視界が悪くなったときに2台目のレーダーのスイッチを入れることです。

くどいようですが、視界制限状態では「レーダー命」です。2台の周波数の異なるレーダーを駆使して、周囲の状況を確認する必要があります。船長から言われてからでは遅すぎます。スコールや霧に出逢ったら自然に2台目のレーダーのスイッチを入れるようになって下さい。また、レーダーのゲイン調整や海面反射調整も小まめに行って下さい。航海中に毎日使用しているレーダーですが、基本操作を疎かにしていませんか?

あるLNG船でSIRE検査員からの指摘事項として「なぜ、常時2台のレーダーを使用していない? S-BandとX-Bandという分解性能等が異なるレーダーを装備しているのだから、安全航行のためには、常時2台のレーダーを使用すべきである。」とクレームされました。私達日本人航海士は伝統的・慣習的に大洋航海中で船が非常に少なく、視界良好なときは1台のレーダーのみを使用して、もう1台は休ませています。

もちろんSOLASにもS-Band、X-Bandの2台を装備することは規定されていますが、レーダー2台を常時使用することは明記されていません。しかし、安全運航維持のためにあらゆるデバイスを最大限に有効活用すべきことは正論のため、「レーダーは1台使用すれば十分であり、2台も使用する必要はない。」と反論できません。耐久性、維持コスト、メンテナンス等の諸問題をクリアーすれば、レーダーの2台常時使用は安全性向上に寄与する重要なファクターです。

パイロット乗船中のレーダーの使い方ですが、2台のレーダーのうち、どちらかのレーダーをパイロット専用として使用してもらいましょう。パイロットが使用するレーダーを勝手に触って調整・設定変更しないよう配慮が必要です。3/Oの中には全くお構いなしでレーダーの調整やレンジをいじるので、パイロットから「こちら側のレーダーは私専用で使わせて下さい。」と念を押されることもあります。パイロットに言われる前に片側のレーダーをパイロット用に提供する心配りが航海士には必要です。ちなみに外国人の船長・航海士はHead Upを好みますが、日本人はパイロットを含めてNorth Upが基本です。

操舵号令

操舵号令をかけるとき、そっと右手、左手を挙げて舵の方向を示す行為は、何気ない行為ですが、身につけていないと直ぐにはできません。もちろん皆さんも操船シミュレーター研修で習っており、実践していると思いますが、なかなか自然にできる人は少ないのではないでしょうか。この間、老齢のパイロットが操舵号令をかけるときに、さりげなく少し右手を挙げながら「Starboard!」、少し左手を挙げながら「Port!」とオーダーしているのを見て、非常に美しく格好良く感じました。安全のためにはもちろんのこと、操船を職業とする者としてカッコ良く、かつ、さりげなく手を差し伸べて号令をかけたいものです。

ちなみに操舵号令にまつわる興味深い話があります。タイタニック号が氷山と衝突して沈没し、1500人近い犠牲者を出したことは有名な話です。この衝突の事故原因に関する最近のトピックスですが、氷山を避けるために出した号令を操舵手が勘違いして逆に舵を切ったことが氷山に衝突した原因であると当時の2/Oが証言していたそうです。現在でも氷山衝突原因は明確になっていませんが、これを公表すると衝突原因が操船の失敗であることが明らかになり、船会社の過失責任を追及され、船会社が潰れることになるので、その証言を隠蔽したそうです。

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