漂流する超大型タンカーの救出記録 12月13日(金)16:50〜NHKニュースシブ5時で放送

ドック前後はバーベキューパーティーの絶好のチャンス!でも…

船員の命を容赦なく奪ってしまう『酸素欠乏』、いわゆる酸欠(さんけつ)の話です。

タンカー、LNG/LPG船に長期間乗船していると船内生活を支障なく過ごしているので、ついつい自分が危険物積載船に乗船していることを忘れがちになります。例えば危険物積載船でありながら、平気で居住区のドアを開けっ放しにする乗組員がいます。

多分ドアを開けっ放した乗組員は自分が乗船している船が危険物積載船であるという意識が希薄なのでしょう。可燃性ガスの漏洩による爆発の危険性があることを忘れているのです。安全な環境が当たりまえのように目の前にあると、ついついそれに慣れてしまい、積極的に安全対策を取るという意識が希薄になります。この「ついつい」に事故の落とし穴が隠れているのです。

例えばガスフリー直後のタンクへ入る場合、酸素検知器・ガス検知器で酸素&ガス濃度をチェックしない人は絶対いないはずです。今から入るタンクが安全かどうか怪しいと必ず思うからです。しかしVoid Spaceに入る場合には、まあ大丈夫であろうと油断して、入ってしまうことが過去には多々ありました。私自身も若い頃はそうでしたが、現在はそういう乗組員はいないと信じています。やはり日頃から面倒くさいことでも嫌がらず、手間がかかることでも我慢して行うという地道な努力の積み重ねによって初めて安全維持を達成できるのです。

この前(と言っても相当前の話ですが)、久し振りにばら積み船に乗船しました。その船で航海中、太平洋が穏やかな日に居住区の直ぐ横のデッキできれいな夕日を眺めながらバーベキューパーティーをしました。「ああ、危険物積載船でなければこんなこともありだなぁ。」と妙に新鮮な気持ちになったのを覚えています。

ちなみに危険物積載船(外航船)でも入渠前のガスフリー後やドック出しの航海はバーベキューパーティーの絶好のチャンスです。日頃は火気の取り扱いに厳しい危険物積載船もこのときばかりは、デッキ上で火を使っても問題ありません。ガスフリー作業やドック作業の疲れを癒し、日ごろのストレスを大いに発散するのがバーベキューパーティーです。

ところで、悲惨な酸欠事故の話もゼロではありません。ずいぶん昔の話ですが、石炭船で起こった事故を紹介します。内地で錨泊中に船長とC/Oの二人がCargo Hold点検のためHopper(Void)内部へ入って酸欠で死亡するという痛ましい事故がありました。もちろん入域前には酸素検知器でチェックしたのですが、残念ながら悲惨な事故は起こってしまいました。

事故発生原因の一つは、投げ込み式酸素検知器のセンサーの結線が左右逆に接続されており、検知器が正確に作動していなかったことです。センサーの線を左右逆に接続できること自体、構造に問題があります。当然フェールセーフとして、逆に接続できない構造にすべきです。また、酸素検知器を使用するときは、最初にふっと息を吹きかけ、正常作動していることを確認することが基本ですが、このときには行わなかったのかも知れません。

その基本ができていれば、今回の悲惨な事故は防げたかも知れません。「酸素検知器は自分を守る最後の命綱」です。酸素検知器やガス検知器は自分たちの命を守る大切な道具であることを十分認識して、常日頃から丁寧に扱い、こまめに点検整備を行いましょう。

余談ですが、事故発生時、錨地で船長の奥さんが訪船しており、一緒に通船で上陸する予定だったのが、急遽、船長がC/Oを手伝うために一緒にVoidへ入ることになり、この惨事に巻き込まれたそうです。船舶管理会社によっては船長とC/O, 機関長と1/Eが同時に閉鎖区画に入ることを禁止している会社もあります。万一、重大事故が発生してもKey Personの二人が同時に事故に巻き込まれないようにするためのルールです。

参考 危険作業のミニ知識理研通商株式会社

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