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船長をも凌ぐ権限や知見を持つ人、それがSIです

陸上から船を統括的に管理する『監督』の話です。

インド人船長に代表される外国人職員の多くが目指すSIは英語で言う「Superintendent」のことですが、船の監督者・管理者であるSIとはどのような仕事をするのでしょうか? 簡単に言うと、船主のために船を適切に管理し、傭船者や運航者の要求に従って安全かつ効率良い運航を指導・監督する仕事です。

ここで利害関係者として船主、傭船者、運航者という立場の人がでてきますが、これら関係者の要求を全て満たすように船を監督するのがSIの仕事と言えます。ある意味SIは船長をも凌ぐ権限や知見が必要となるのです。自社船の管理、3rd Party船の委託管理等によりその立場や職務に違いがありますが、船を適切に管理し、安全かつ効率良い運航を指導・監督するというSIの職務に変わりはありません。

総合的に船舶管理を担当するSIはTechnical SIであり、機関士(機関長)経験者が大半を占めています。航海士・船長出身のSIでは機関関係の知識・経験が乏しく、総合的に船舶管理業務を遂行するには荷が重すぎます。そのため、どうしても機関士・機関長経験者が多くなっています。

機関出身のSIは法規、保険やある程度の航海・運航関係に関する知識もなければ務まりません。特に私達船員があまり得意ではないところの、予算管理、コスト管理にも十分に精通しなければSIとしては失格です。皆さん航海士の場合、SIはSIでもMarine SIとして陸上勤務する機会があるかも知れません。Marine SIはTechnical SIと違って、荷役や運航に関わる部分に特化した監督業務を担当します。

ある参考書籍(船舶管理入門:絶版)を読むと、SIに求められる資質・素養は以下の通りとなっています。

  1. 社会人として一般常識・英語能力を有し、OA機器取扱に精通している。
    多くの日本人船員の課題である英語力、そしてパソコン力が必要です。海外の顧客や業者を相手にパソコンで英文メールをさらさら作れる人
  2. 業務遂行上の強靭な精神力を有する。
    交渉術に秀でて、いわゆる押しが強いことが必要です。ドックや業者を相手に妥協せず、こちらの要求を貫く人
  3. 船舶全般に関する専門知識と職務経験を有している。
    主任者もしくは船機長経験者としての知識が要求されます。船機長や主任者を相手に対等もしくはそれ以上の技量を有する人
  4. トラブルに対して迅速に対処しうる能力を有する。
    視野の広さ、要領・段取りの良さが求められます。トラブルが発生した船をリカバーするために迅速に対応できる人
  5. 営業的センスを有し、傭船者に適切な対応・プレゼンテーションができる。
    顧客を満足させる雄弁さが要求されます。常にコスト意識を持ち、顧客に対して丁寧かつ誠意ある態度の人
  6. 個人的情報網及び支援システムを構築できる能力を有する。
    いわゆる顔の広さが必要です。多くの業者と付き合いがあり、必要なときに有益な情報を入手できる人

SIの多くが一等機関士又は機関長クラスの人なので、航海士である皆さんには直接的には関係ないかも知れませんが、Marine SIというポストに就く場合は上述したTechnical SIとほぼ同様の資質・素養が求められます。皆さんはSIとしての資質・素養が備わっているでしょうか?将来Marine SIの仕事をしない人もMarine SIができるレベルまで技量を高めることを目標にしてみてはいかがでしょうか。

世界的にはインド人船員のようなSI供給先が十分に確保されているのでSI要員不足という問題は当面は発生しません。しかし、日本の海運会社にとっては40歳から55歳までの働き盛りのSIが少ないため、どうしても長期間SI職を務めることとなり、今後もSI要員不足という問題が継続していくことになります。

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