頭が高い、控えおろう、このOPMが目に入らぬか!

堅苦しいイメージが先行するOPM(Operations Procedure Manual)ですが、そのOPMが意外にも円滑な人間関係を維持するために役立つという話です。

乗組員全員が日本人であった頃は甲板部、機関部そして無線部(事務部)の各部間の見えない壁は相当高いものでした。その高すぎる壁のおかげでどれだけ無駄な摩擦エネルギーを消費していたことでしょうか。船によっては甲板部と機関部でいがみ合ってしょっちゅう喧嘩していました。

一航士と一機士の意見の相違や甲板長と操機長の仲が悪いと船内の仕事もスムーズに進みません。甲機合同作業でお互いに協力が必要な仕事の場合には大変です。仕事が思うようにはかどらず、これでは簡単に修理できるはずの機器も直りません。さらに、船長と機関長が不仲な場合は事態はもっと深刻で、船が安全に走るはずもありません。

主任者同士が口をきかなかったり、職長である甲板長と操機長が喧嘩をしたりすれば、船内融和もあったものではありません。雰囲気は暗く、食事中の会話数も極端に少なくなり、船内生活が楽しいはずありません。その点で言えば最近はすべて混乗船となり、日本人が数少なくなったお陰で、お互いが壁を作っている余裕はありません。もちろん人間ですから、たまには相性の悪い人と乗り合わせて、不仲となるケースもあるにはありますが・・・

そんな古き日本人全乗時代になかったものが「OPM」です。いわば「船の作業手順書」です。現在の船の仕事は全てこのOPMに基づいて行われていると言っても過言ではありません。普段はOPMに規定されていることに従うことに辟易し、うっとうしさを感じることも多々あります。過剰とも言えるほど細かく取り決められている項目や実務からかけ離れている項目には閉口することも多々あります。しかし、ひとたび船内のトラブルや職務上の問題が発生した場合、OPMが非常に役立つのです。

従来なら甲板部と機関部のどちらが担当する仕事か不明確でお互いに責任をなすりつけようとする場合もOPMに明記されていれば、一目瞭然、即座に問題解決できます。全員がOPMに従わざるを得ません。また、作業に部下が不満をもらした場合でも、OPMに規定されていることを示せば、部下も従わざるを得ません。OPMも時と場合によっては「頭が高い、控えおろう、この印籠が目に入らぬか!」でおなじみの「水戸黄門さまの印籠」となるのです。 仕事の手順や責任所在の拠りどころです。Company Policyが「船の憲法、憲章」とするならば、OPMは「船の法律」です。

ちなみに聞いた話ですが、欧米の船では機関室や操舵機室のことは機関部に全て任せ、甲板部は「我関せず」のようです。例えば外国船ではSewage掃除や操舵機のグリース補給を甲板部が担当せずに全て機関部が面倒を見ています。

OPM以外に融和を維持し、団体生活を円滑に過ごすために大切なものとして「船内申し合わせ事項」というものがあります。船にはその船ならではの事情というものがあります。船種・航路の違い、乗組員の国籍・文化の違い、船内設備の種類等々がそれぞれ船で異なります。そこで乗組員全員が円滑な生活を過ごすことができるよう決まりごとを共通認識・相互理解し、明文化したのもが、「船内申し合わせ事項(Master’s GuidanceあるいはMutual Agreement)」です。

その内容は掃除分担や食事時間等生活に関する事項に始まり、上陸手順等船内規律に関するものも含まれます。みなさんも乗船したら、まず船内の「掟」であるこの船内申し合わせ事項を一読し、生活の取り決めや規律を守り、快適な船内生活を過ごすようにしましょう。

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