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パスポートをなめてかかると、とんでもないことになります

海外において私達の身分を証明するために必要なパスポートですが、海外旅行の際に紛失すると大変です。そんな『パスポートにまつわるトラブル』の話です。ある外国の港で官憲にCrew Listの訂正を強く要求されました。Crew ListにChief Stewardと記載していることを指摘され、Chief Cookに訂正するよう指示されたのです。私達はStewardもCookも同じような意味で使っており、何を指摘されたのか理解できませんでした。

英語辞書ではStewardは給仕する人でCookは料理する人です。では給仕とは何でしょうか?食事の席で飲食の世話をすることで料理をすることではありません。従って、正確には英語のStewardとCookは意味が異なりますが、多くの人が混同して使用しているようです。皆さんは意識してChief CookとChief Stewardを使い分けていますか?船ではどちらの呼び方でも構わないのかも知れませんが、問題となるのは船員手帳等の公式な書類にどちらの職名で記載しているかです。

船員手帳のRankにChief Cookとして記載されていれば、それに合わせてCrew Listの職名もChief Cookとする必要があります。細かなことですが、公式文書は一字一句たりとも正確であることが求められ、間違いは一切許されません。ですから、皆さんもPort Document作成の際は、決して誤字・記入間違いがないよう最新の注意を払う必要があります。

名字(Family Name)と名前(Given Name)を間違うのはもってのほか、誕生日やPassport番号、船員手帳番号も十分に注意して間違いないようにしましょう。特に乗組員交代があって、古いCrew Listをコピーして使用するときは要注意です。間違ったまま、修正し忘れたままでCrew Listを官憲に提出しないよう細心の注意を払い、何度も見直しましょう。

聞いた話ですが、ある船員が自分の船員手帳の後ろのページにパスポートをホッチキスで止めていました。本人は重要なパスポートを紛失しないようにしたつもりでしょう。そして、彼が乗船した船がシンガポールに入港した際に彼のパスポートが見当たらないため、大騒ぎになり数時間経ってようやく船員手帳の後ろにパスポートが引っ付いていることがわかりました。

そのとき対応した官憲はカンカンに怒り、パスポートの取り扱い方が規則違反であるとの理由で、その船員を監獄行きにしたそうです。何日間抑留されたか知りませんが、実際にあった話だそうです。いくら理不尽と言ってもどうしようもありません。官憲を怒らすととんでもないしっぺ返しをされるという例です。

ちなみに「官憲」とは役所のこと、又は役所で任務に携わる人のことです。特に警察関係の役所や役人を「官憲」と呼ぶことが多いようです。つまり、私達がかかわる「官憲」とは税関や入国管理局(略して入管)のことです。私達には日本の税関と入管が横並びの機関のようなイメージがありますが、実際には税関は財務省管轄の出先機関であり、入国管理局は法務省管轄の機関で管轄が異なります。いずれにせよ、私達船員はその対応の仕方を間違えないよう、相手に敬意を表し、礼節を重んじた丁寧な態度が望まれます。

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