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オルディスランプってどんなランプ?

『船舶保安(Ship Security)に使用する機器』の話です。

SSP(Ship Security Plan)の規定により船では毎月1回、船舶保安に関するシステム・機器の点検を義務付けられています。保安に関連する機器として、船舶警報通報装置(SSAS:Ship Security Alert System)、トランシーバー、甲板照明装置の他に「ALDIS Lamp(オルディスランプ)」があります。「ALDIS Lamp」という名前を聞いたことがあるでしょうか?

実は日本人が「Day Light Signal」と呼んでいる昼間信号灯のことです。オルディスランプとは信号用ビームランプの商標名で、開発者の名前だそうです。欧米諸国(外船)ではDay Light Signalよりもこの名前の方がポピュラーなようです。この名前を覚えておけば、外国人の検査員に「ALDIS Lamp」と言われても「何それ?」と慌てることもありません。

同じようにSecurityにかかわる機器としてCCTVを知っていますか?テレビの番組ではありません。検査員に「本船はCCTVがありますか?」と尋ねられて、答えられないようでは困ります。「Closed Circuit Television」いわゆる監視カメラのことで、船首尾、マニフォールド、機関室等をモニタリングするシステムです。

CCTVで現場の状況を確認することにより船舶の保安が維持され、かつ作業の進捗状況や火災・漏洩発生の有無も確認できます。CCTVのトラブルで多いのが、ワイパーの故障と洗浄液用ポンプの故障です。ワイパーが動かない・止まらないトラブルや洗浄液が出ないというトラブルが多発しています。

ところで、船舶保安維持の観点から、緊急時に備えて通信手段を確保しておく必要があります。日本近海ではNTTの衛星船舶電話が使用できますが、それ以外の海域ではインマルサット電話を使用します。世界規模でサービスを提供しているシステムには、インマルサット電話以外にもイリジウム電話があります。しかし、過去、日本籍船では日本国内の電波法によって規制され、イリジウム電話は非常時通信のみに使用可能で、通常での一般使用が認められていませんでした。公認されなかった理由は日本国内にあった免許人である会社が潰れたからです。

イリジウム電話サービスは66機の衛星で1998年から運用されていますが、1年足らずで会社が破綻しました。その後ベンチャー企業のイリジウム・サテライト社が引継いで2003年より一般向けサービスも開始されています。電波法には規制が多く、私達船員にとって不自由な法律であり、あまり歓迎されていません。2002年時点ではイリジウム電話の使用は限定されていましたが、最近はKDDIが法人向けにサービスを行っています。


参考
イリジウム衛星携帯電話KDDI

現状では船舶保安上、複数の通信手段確保が必要との理由からイリジウム電話を搭載して、非常の際の通信手段としています。但し、機器自体が非防爆型なため、危険物積載船での使用に際しては注意が必要です。また、最近はスマートリンク(Smart Link)という東南アジア海域限定の衛星電話が普及しつつあります。

しかし、この電話もイリジウム電話と同様に防爆型でないことには問題があります。スマートリンクの電話機にはアンテナを使用するタイプ以外に普通の携帯電話のようにアンテナを必要としないものがありますが、携帯電話型の価格は100US$程度高くなります。

注意

いずれも執筆当時の情報です。

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