少し肩が凝るお堅い話になるかも知れません。『事故に関連する言葉の定義』の話です。
事故関連の英語としてインシデント(Incident)、アクシデント(Accident)、ニアミス(Near Miss)、ハザード(Hazard)、リスク(Risk)をよく使用しますが、その定義の違いを明確に述べることができますか?アクシデントは中学英語で習い日頃から口にする単語なので馴染み深いと思いますが、インシデントはあまり使用しない馴染みの少ない英語ではないでしょうか?
各英語を日本語に訳すと概ね以下の定義となります。インシデントは事故以外にも事故になる要因を含めた「広義の意味での事故」であり、アクシデントは「狭義の意味での事故」と理解して良いでしょう。ですから、インシデントにはアクシデント、ニアミス、ハザードすべてが含まれます。私達が「そんなはずじゃなかった。」と思うすべての事象がインシデントです。
- インシデント(Incident)
結果的にロスを生じる、または生じる可能性のある出来事です。ひとことで言えば「予想し得なかった出来事」です。 - アクシデント(Accident)
事故、災難、偶発的事件で、おもいがけなく発生し、結果的に人に危害を与えたり、資産に損害を与えたり、工程にロスを生じたり、環境に損害を与えたりする「望ましくない出来事」です。 - ニアミス(Near Miss)
危害が生じる前に状況を改善できなければ「インシデントやアクシデント発生に至ったであろう出来事」です。ニアミスの代表的なものとして、誰でも思い浮かべるのは飛行機の異常接近でしょう。一歩間違えば大惨事です。 - ハザード(Hazard)
日本語では危険源です。従って、危害の元となる行動、配置、環境、事件、発生、現象、工程、状況、物質のことです。いわゆる「危険の種」です。ゴルファーにとっても危険の種はゴルフコースのハザードでしょう。 - リスク(Risk)
不利益となる事象が起こる可能性のことです。「リスクは発生頻度(Frequency)と重大性(Impact)の掛け算」と考えればわかりやすいでしょう。頻度が高く、結果が重大となるリスクが最も避けるべきリスクということになります。株式投資でもリスクという言葉をよく使います。
ところで、「インシデント報告及び調査 (Incident Investigation)」という言葉を聞いたことがありますか?これは、簡単に言えば事故発生防止のための手順(手法)です。主たる目的はおおむね以下の3つです。事故の拡大・再発防止のためにIncident Investigationという手法があります。
- インシデントの拡大防止
船からの迅速な情報を陸上が入手し、支援を行うことによりインシデントの被害拡大を最小限にします。 - インシデントの再発防止
船陸関係者全員が情報を共有することにより同種のインシデントの発生を防止する。 - 重大アクシデントの発生防止
船陸が協力して報告と調査を実施することによって、いまだ発生していない重大アクシデントを未然に防止します。
いずれにせよ、これらの言葉の定義を理解するよりも実際の現場でインシデントやアクシデントの発生をミニマイズすることが最重要課題であり、鋭意努力する必要があります。
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