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濡れた軍手が引き起こした取り返しのつかない悲劇

鉱炭船で実際に発生した痛ましい『転落死亡事故』の話です。

鉱炭船は文字通り鉄鉱石でも石炭でも積むことができる船ですが、前航海の貨物が鉄鉱石で、次の貨物が石炭の場合は、カーゴホールドを掃き掃除し、さらに水洗いまでして鉄鉱石を残さずにきれいにする必要があります。石炭を使用するときに鉄鉱石の混入をとても嫌うのです。事故発生時も丁度そのケースとなり甲板部が鉄鉱石から石炭へカーゴ切り替えのためにホールド掃除を実施しました。

若い元気な3/Oも航海当直が終わった後、甲板部のホールド掃除作業を手伝います。そのときも3/Oは深さ20m以上もあるホールド内のタンクトップ(底)まで降りて、甲板部と一緒に掃き掃除や水洗いを行いました。そして作業が終わり、3/Oは上甲板へ上がるため、Vertical Ladder(垂直梯子)を登り始めました。ところが、上段近くまで登ったところで悲劇は起こりました。突然、彼は梯子からホールドのタンクトップまで転落してしまったのです。高さは20m以上あったかも知れません。残念ながらその3/Oは尊い命を落としてしまいました。乗組員が死亡するほど悲惨な事故はありません。転落の原因として考えられたのが、梯子を登るときに着けていた軍手です。ホールド水洗いで軍手がびしょびしょに濡れたまま梯子を登ったのです。濡れた軍手は非常に滑りやすいものです。

垂直梯子のステップ棒が多少でも錆びて表面がでこぼこしていれば、滑り難いでしょうが、上部のほうのステップ棒は錆もなくペイントが塗られたつるつるした状態だったのかも知れません。さらに、当直明けの連続作業で疲れ、梯子を上がるうちに握力もかなり弱くなってくるはずです。そんな状況下で、つるつるの棒を濡れた軍手で持てばどうなるか、後から思えば誰もが危険であることがわかるはずです。危険は私達の周囲のあらゆるところに潜んでいます。皆さんも自分の身は自分で守ってください。

ところで、高所作業というときの高所とは床からの高さが何メートル以上とルールで定義されているか知っていますか?そうです。2m以上です。私が若い頃には高さ5m以上で行う作業が高所作業であると習いましたが、いつの時代からか2m以上が高所と定義されました。

2m以上となると、脚立を使えば手が届きそうな場所の作業でも高所作業となってしまいます。しかし、船員労働安全衛生規則(第51条)にも「床面から二メートル以上の高所であつて、墜落のおそれのある場所」と明確に規定されています。当然、高所作業を行う場合は、適切な安全具を使用し、監視員も配置しなければいけません。

特に高所作業の安全対策に神経を尖らしているのが造船所です。造船所では高さ2m以上で作業を行うときには、必ず足場を設置するよう要求されます。脚立で手が届きそうなところでも足場を組んでからでないと作業の許可が絶対にもらえません。上写真のように乗組員がボースンチェアーを使う作業は例えばシンガポールの造船所では一切禁止です。

編集部から

以下は、造船・舶用工業に従事する外国人労働者向け教材ですが、乗組員の方々にも役立つと思います。

(高所作業に関する動画とテキストがご覧いただけます)


担架よりハーネスのほうが、いざと言う時に役立ちますよ

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