船学の動画サイトがOPEN!

もしも、パイロットラダーのステップが壊れたら(その2)

舷梯操作と同様にヒューマンエラーによるパイロットラダーのトラブルも発生します。

巻き上げ時にどこかに引っ掛かったのかを知らずにそのまま巻き上げて、ステップやスプレッダーを折損させることもあります。ある船ではコンビネーションラダーの収納時にAccommodation Ladderにパイロットラダーが引っ掛かったのに気付かずに巻き上げてパイロットラダーのStepが破損した例があります。また、エアーウィンチの誤作動防止ストッパーを解除せずに巻き上げてストッパー部を局損させた船もあります。ヒューマンエラー防止策の一つとして、可能な限り舷梯やパイロットラダーの操作は慣れた甲板部員が担当すべきです。

パイロットラダーの不適切な準備によるパイロット乗下船時の人身事故も多く発生しています。船の過失責任が問われる重大な人身事故です。例えば、パイロット側より海面上1m位置にコンビネーションラダーを準備するよう指定されたとき、パイロットラダーを降ろし過ぎて、波やうねりによりパイロットラダーが海面に触れ、パイロットラダーが大きく揺れたり、反転したりします。これはパイロットにとって非常に危険な状態となり、実際、過去にこれが原因でパイロットの転落事故が発生しています。

パイロットが乗船して船橋に昇ってきて、パイロットラダーが高過ぎる、低過ぎるとクレームを受けることも少なくありません。このようにパイロットラダーの海面上高さの位置調整は非常に重要な準備作業です。また、マンロープを準備するときも要注意です。丈夫で十分な長さのマンロープを用意し、ステップ最下部端と同じレベルまで十分降ろしてしっかり固定します。

途中で弛みがあると非常に危険です。しっかり固定することが重要です。パイロットラダーやマンロープがしっかり固定されておらずに、パイロットが掴んだ重みで滑り落ちるのが最も危険です。パイロットラダーやマンロープ準備完了後は確実に重量をかけて固縛状態が良好なことを確認しましょう。

もし、万一パイロットが海中転落した場合、あなたはどうしますか?近くに設置している救命浮環を咄嗟に水面に浮かぶパイロットの近く目掛けて投げることができますか?夜間であれば、自己点火灯の付いた救命浮環が有効かも知れません。昼間ならば、船橋Wing設置の自己発煙信号付きの救命浮環が効果的かも知れません。

当然のことですが、船に行き足がある場合は、救命浮環を索で船体に固定していては役に立ちません。その場合、索で船体に固縛していない救命浮環を投げましょう。そして、とにかく海中に落ちたパイロットの位置を見失わないようにすることです。少しでも波があると小さな人間の姿をあっという間に見失ってしまいます。高所である船橋からの継続監視が特に重要です。さらには時間やGPS船位の記録も必要です。港内では不要かも知れませんが、ECDISによるMan Overboard位置の記録が有効かも知れません。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。