水先人の命にかかわる『パイロットラダー』の話です。
多くの船は予備のPilot Ladderの完備品を1セット所持しています。又、完備品を所持していない船は、予備ステップと予備スプレッダー (振れ止め板) を数枚ずつDeck StoreやSteering Roomに保管しているはずです。
そんな予備のステップやスプレッダーに2種類のタイプがあるのを知っていますか?ステップやスプレッダーが壊れて取り替えた経験をした人は知っているでしょうが、経験がない人は2種類あることを意外と知らないのではないでしょうか? 2種類とは「正規用」と「補修用」です。
私も過去に数度スプレッダーが折れたり割れたりした経験があります。木製ですから古くなれば経年劣化により簡単に割れます。特にスプレッダーは長細く、大きな力が掛かるため、壊れやすいようです。通常のステップやスプレッダーは両端に穴が貫通しており、そこにサイドロープを通しています。もし途中のステップが壊れると、端から順番に壊れたステップまで引き抜いて、新しいステップを入れ直さなければならないため、取替えにはかなりの長時間を要する作業となり、簡単にはできません。そこで下写真のような「補修用ステップ」や「補修用スプレッダー」を利用するのです。
これらを利用すれば短時間で修理することが可能となります。手順は壊れたステップだけを取り外し、そこへ二つ割りの横溝がついた「補修用ステップ」を差込み、Sprit Distance Pieceをボルト止めします。これで壊れたステップを簡単にサイドロープに取り付けることができるのです。スプレッダーも同じ要領です。
この「補修用ステップ」、「補修用スプレッダー」は1個のパイロットラダーに最高でも2段までしか使用できないことを知っていますか? 従って、3個以上の「補修用ステップ」、「補修用スプレッダー」を使用することはできません。さらに補修用で取り付けたステップ・スプレッダーはどうしても強度が十分でないため、あくまでも一時的な応急対策であり、可及的速やかに正規のステップ・スプレッダーに交換するよう義務付けられています。
このことはSOLASにもきちんと規定されています。新しいパイロットラダーが壊れることは余りありませんが、古くなると壊れることも時々あるので、航海士は予備ステップ、予備スプレッダー(正規と補修用の2種類)の保管数量と保管場所を把握しておく必要があります。あたなは自分の船が何処にどれだけの予備ステップ、予備スプレッダーを保管しているか知っていますか? (IMPAカタログ page 23-5 参照)
ちなみに、パイロットラダーに取り付けている「揚収索」、このロープは下図の右側の悪い例のように低い位置に結んでいると接舷しているボートに引っ掛かる恐れがあり非常に危険です。従って、左側のようにボートや昇降する人の邪魔にならないよう振れ止め板の端に結ぶのが正しい取り付け方です。自分の船のパイロットラダーは大丈夫か、ロープが適切に結ばれているか今一度、点検して下さい。