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普段、目をやらない場所に潜んでいる危険

船内の機器やワイヤーに使用されている『グリース』の話です。

ある船で舷梯のワイヤーがあわや切断するというトラブルがありました。甲板部の人達は普段から舷梯のすぐ横を通ることが多いので、舷梯ワイヤーの状態には目が行き届いているはずです。ところが意外と死角となっているところがあるのです。例えば、舷梯のシーブの裏側は普段人目につき難い場所です。ある船で、そのシーブの裏側(海側)のワイヤーのStrandが発錆により60%以上切断された状態だったのです。

幸い、ボースンが見回り中に発見し、大事に至らなかったのですが、一歩間違えば、パイロットや乗下船者を巻き込む人身事故が発生する可能性がありました。シーブ部分の海側は丁度死角となり非常に目につき難いところです。この部分のグリースが切れて錆損が発生していました。やはり日頃の甲板上の巡回点検では、こういった普段目をやらない場所こそ、注目する必要があります。

昔に比べて最近の混乗船ではグリースの塗布不足により、ワイヤー類に錆びが発生しているのが特に目に付くように思います。Mooring Wire、Life Boat Fall Wire、Crane Wire、Fire Wire、Anchor Lashing Wire、種々PostのStay Wire、どれも安全にかかわる重要なワイヤーです。常に良好な状態を維持しておく必要があります。日本人のボースンが乗船していた頃はC/Oの指示がなくても、甲板部が自発的にグリースアップしてワイヤー類を良好な状態に維持していました。しかし、混乗船では外国人甲板長に具体的に指示しなければ、なかなか自主的にはGrease Upをしてくれません。また、ウィンチの軸受けのグリースアップはウィンチを動かしながらグリースを注入するのが常識ですが、ときどき甲板部員が止まっているウィンチにグリースを注入しているのを見かけます。ウィンチを回しながらグリースニップルからグリースを入れなければグリースが均等に軸受けに行き渡りません。

Life Boat Fall Wireは非常に重要ですが、どの船もDavit付近やBoat Block付近に発錆が多くみられます。Windlass、Winch、CraneのGear Greaseも切れている船が多いのではないでしょうか。しっかりGear Compoundを塗布しましょう。ある船では注文を忘れて手持ちのGear Compoundが無くなっていることに、唖然としたこともあります。入出港が多い船や航海日数が少ない船では、ついついグリースアップ作業を後回しにしてグリースアップの頻度が少なくなりがちですが、重要なWire類やGear類にはしっかり油を塗布する必要があります。

Wireの目視による損傷状況の点検では、以下の3点がチェックポイントとなります。

  1. 形崩れ
    素線やストランドの飛び出しがない。/ 扁平な部分がない。
  2. 摩耗・腐食
    錆であばた状になっていない。
  3. 断線
    1箇所に4、5本以上の素線の断線がない。

Life BoatやGangwayのWireは人命にかかわる重要なものです。定期的なグリースアップだけでなく、頻繁に目視点検を実施し、重大な損傷を発見した場合には、振替・取替を行うことで、常に良好な状態を維持するようにして下さい。

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