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ガス検知にあって発電にないもの、なーんだ?

突然ですが、クイズです。「ガスケンチキ」、「ユスイブンリキ」、「ブンドキ」にあって「ハツデンキ」、「セイジョウキ」、「アッシュクキ」にないものは?

すぐに正解がわかる人はクイズ通です。答えは「器」という文字です。どちらも「キ」という言葉が語尾に付きますが、ガス検知、油水分離、分度には「器」という文字が付いて、ガス検知器、油水分離器、分度器と書きます。発電、清浄、圧縮には同じ「キ」でも「器」ではなく、「機」という文字が付き、発電機、清浄機、圧縮機となります。皆さんは「器」と「機」の違いを意識したことがありますか?

どこかで習ったかもしれませんが、同じ「キ」でも「器」と「機」は意味が異なります。広辞苑で調べるとどちらにも「道具」という意味がありますが、何が異なるのでしょうか?「器」は動力を必要としない道具で、「機」は動力を必要とする道具です。船内には「器」が付く装置も「機」が付く装置もたくさんあります。係船機、揚錨機、操舵機、蓄圧器、濾過器、湯沸かし器・・・船内に装備されている装置を一度、羅列してじっくり考えてみるのもおもしろいかも知れません。

「器」の代表格、「ガス検知器」の話です。危険物積載船、いわゆる原油タンカー、ケミカルタンカー、LNG船、LPG船の乗船経験者にとっては常識的な話です。ガス検知器を使用するにあたっては、赤外線方式(Infrared)と接触燃焼方式(Catalytic)の2種類のガス検知器があり(他にもありますが)、その違いを理解しておく必要があります。接触燃焼方式とは文字通り、対象ガスを燃焼させ、その熱反応による電気抵抗の変化を計測することによりガス濃度を知る方法です。

したがって、計測する気体の中に酸素が含まれている必要があります。ある程度の酸素がなければ正常な値を計測できません。一方の赤外線方式では酸素がなくても正確なガス濃度を計測することができるのです。赤外線を吸収するガスと吸収しないガスの差を利用してガス濃度を計るのが赤外線方式です。この2種類のガス検知器の違いを十分に理解して状況に応じて使い分けなければいけません。ときどきSIREの検査員が航海士に2種類のガス検知器の原理や使い方の違いについて質問することがあるので、てきぱきと答えて検査員に好印象を与えて下さい。


参考
技術情報-センサ原理理研計器株式会社

ガス検知器の校正には専用の標準ガスを使用しますが、この標準ガスが非常に高価なのです。しかも小さなボトルに少量しか入っておらず、無駄に使用すればあっという間になくなってしまいます。メーカーの話では、1種類のガス(酸素・窒素・炭素等)を充填して作るガスボトルは簡単に製造できるそうですが、2種類の気体を充填して指定の濃度の混合比に調整した校正用標準ガスは製造に非常に時間と手間がかかるそうです。

一回の充填では指定された濃度(%)のガスができないため、充填して落ち着くのを1日程度待って、落ち着いた後に分析器にかけ、過不足調整のために再充填します。この作業を繰り返し行うため、正確な濃度のガス製作には1ヶ月以上かかることもあるそうです。しかも、それだけ手間をかけても指定%の1割程度の誤差がでることもあるそうです。標準ガスの値段が非常にお高くなるわけです。もちろん高いからといって、使わないで済ましてはいけません。命を守る道具であるガス検知器が正常なことを確認するガスです。適当量の標準ガスを使用していつでもガス検知器を適切に使用できるよう校正しましょう。

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