安全靴を履いていなければ、大惨事になっていた

痛々しい『挟まれ事故』の話です。

乗組員は“事故・災害の発生ゼロ”を目指して日々努力しています。しかし、残念ながら事故・災害は“ゼロ”とはならず、毎年一定の割合で発生しているのが現実です。発生が多い災害は、手足の指を挟まれる事故や目への異物混入です。指を挟まれる事故がたびたび発生するのは、危険が潜んでいる場所で作業を行うときに、手足の指をどうしても動いている機器に近づけることが多くなるからです。そのため、万全の注意を怠ると機器に挟まれて怪我をする可能性が高くなります。

回転する機器に手を近づけるときは巻き込まれないようにするために軍手を着用せず、また袖をクリアーにすることが基本です。そして、ドアや蓋等の指が挟まる箇所に手を絶対に置かないことです。「そんなことは当たり前」と判っていても挟まれ事故が起こってしまいます。挟まれ事故防止のためだからと言って指を機器に近づけなければ、仕事になりません。ですから事故防止のためには、ハード的に防止対策を施すことが重要です。ハード的防止策とは挟まれないようカバーを取り付ける等の工夫です。

ある船でこんな事故がありました。甲板部員数名で船尾のクレーン用ワイヤーのグリースアップ作業をしているときでした。1人がクレーン頂部まで登ろうとして、ワイヤードラムのそばに足をかけました。そのとき、他の1人がワイヤー巻き揚げ作業を一旦停止すれば良かったのですが、作業を続行しました。そのため、ワイヤードラムは回転したままです。クレーンを登ろうとした作業員が置いた右足が回転しているワイヤードラムの突起物に挟まれてしまいました。(下写真:左舷側クレーン)

右足の安全靴の先はえぐれて、中の鉄板が飛び出ている状態でしたが、幸い足の指1本の骨折で済みました。安全靴を履いていなければ指がちぎれていたかも知れません。もちろん負傷した当人は次の港で下船し、治療を受けました。

後で判ったことですが、まったく同じ事故が同じ船、同じクレーン、同じ状況で5年前にもあったそうです。前回の事故後、すぐに挟まれる可能性がある場所へ足を乗せられないようにプロテクトカバーを取り付けました。それが5年後には上写真のように錆び朽ちてなくなっていたため、今回も同様の事故が発生したのです。クレーン頂部へ登るときに誰もが足を置きたくなる場所なのです。

足を置けないようハード的対策としてカバーを施していましたが、それがなくなっていてはどうしようもありません。もちろん作業員が登っているときにクレーン操作を中断しなかったことが直接的な事故原因です。事故再々発防止対策として、写真のような警戒色に塗装したプロテクトカバーを作成・設置しました。(下写真:右舷側クレーン)

挟まれ事故と言えば、エレベーターの点検作業時の挟まれ事故も繰り返し発生する悲惨な事故です。エレベーターにかかわる事故に加えて、係留作業での事故、救命艇での事故は人命を失う重大事故となることもあり、万全の安全対策、綿密な作業計画、現場作業者の細心の注意が必要なことは言うまでもありません。

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