エアーを使用しているのに、なぜエアーレスと呼ぶの?

刷毛塗りよりも塗装表面をきれいに仕上げることができる道具、『塗装機』の話です。

船で使用する塗装機を「エアーレススプレー(Airless Spray)」と言いますが、エアーを使用しているのになぜエアーレス(Airless)と呼ぶのか知っていますか?

スプレーには2種類のタイプがあります。1つは圧縮空気でペイントを吸入して圧縮空気と一緒にペイントを吹き付ける「Air Spray (エアースプレー) タイプ」です。そしてもう1つのタイプは圧縮空気でペイントを加圧して、ノズルからはエアーを除いたペイントだけを噴出させる「Airless Spray (エアーレス) タイプ」があります。後者のペイントだけ吹き飛ばすエアーレスタイプの方が、ペイントのロスも少なく、塗膜も厚くすることができるため、エアースプレータイプより効率が30~50%も良いのです。エアーレスと呼んでいるのは文字通り、エアーを含まないペイントだけを吹き付ける仕組みになっているからです。

では、皆さんは塗膜のおおよその厚さを把握していますか?例えばドックで塗装する船底のA/F(Anti-falling)の塗膜厚さはどれぐらいでしょうか?A/Fの多くは自己研磨型で徐々に溶けて海洋生物の付着し難い滑らかな表面を維持し、塗料に含まれる重金属で海洋生物が付着しないようにしています。昔は錫(Tin)を使用していましたが、海洋環境保護の問題から現在はTin Freeとし、赤色の粉末顔料である亜酸化銅(Cu2O)をA/Fペイントに使用しています。その溶ける速度の目安が7~8μ/月なので、2.5年間後の次のドックまでの30ヶ月に約250μの厚さのA/Fが溶ける計算になります。従って溶けた厚さ分だけドックで塗装し直すことになるのです。μはもちろん1000分の1ミリメートルのことなので、おおよそ0.3mmの厚さのペイントをドックで塗ることになります。1回のエアーレススプレーでの塗膜厚さが100μとすれば、3回塗りで厚さ300μの塗装が完了です。

続いて『ペイントの色』の話です。同じメーカーの同じ型番のペイントでも色が一緒とは限りません。同じ色と思って注文したペイントを実際に塗ってみると前に塗ったところと、微妙に色合いが異なったり、濃淡の差があったりすることが多々あります。前に塗ったペイントが時間経過とともに変色したために色が異なって見えるなら納得ですが、同じメーカーの同じ型番の新品のペイント缶を開封して同時期に塗装しても明らかに色合いが異なることがあります。

塗料メーカーが違うならば、同じマンセル番号(ペイントの色合いを示す規格番号)でも色合いが異なるのは納得できます。例えばN-7とN-5では見た目の色は全く異なり、N-7は明るいグレー、N-5は暗いグレーです。N-4になるとまるで軍艦色です。しかし、このマンセル番号が曲者なのです。同じ塗料メーカーで同じマンセル番号でも色合いが若干異なることがあります。なぜ、同じ会社の同じ型番ペイントなのに色合いが違うのか納得いきませんが、塗料会社でさえ微妙な配合を統一して同じペイントの色を作り出すことは非常に難しいようです。同じ塗料会社の同じロット(生産ライン)で同時期に製造しない限り、まったく同じ色の塗料を作るのは困難です。

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