船長・航海士に必要な『リーダーシップ』の話です。
Leadershipは日本語で「指導力・統率力」という意味です。昔、会社における指導力・統率力(リーダーシップ)についての特集記事が社報に掲載されていました。リーダーシップには不可欠な5大要素があると言います。その記事を参考にして海上で働く船員に必要なリーダーシップについて考えてみました。あなたは船員のリーダーシップに欠かせない5大要素を持っていますか?
1. 変化を先取りし生み出す力
船員は短期的、局所的な「戦術」の思考・行動は得意ですが、長期的、大局的な「戦略」の思考・行動についてはやや不得意な傾向があります。安全第一という名のもとで、船の作業は総じて保守的で堅実な仕事が多くなっています。「前から・・・だ。」「引継ぎでは・・・だ。」「・・・で問題ない。」という言葉で片付けてしまうことが多いはずです。しかし、そこには、まだ私達が気が付いていない改良すべき点や創意工夫すべき点がたくさんあるはずです。
自分の職務をマンネリ化させず、常に創意工夫する試みを念頭に仕事を行い、ときには自分のアイデアを実践してみることも必要です。急速に変化しつつある海上職の現場で時代を先読みし、大きな流れの中で自分を見失わず、船員として進むべき道をしっかり歩いていくことが船員に必要なリーダーシップの要素のひとつです。
2. 周囲の協力を導き出す力
船のほとんどの仕事がチームプレーです。人と人のつながり方の良し悪しが安全性にも影響を及ぼします。船内融和、クローズドコミュニケーションという言葉で表されるように普段から円滑な人間関係の構築・維持が必要です。場合によっては部下を信頼して仕事をまかせることも大切です。また、場合によっては上司に自らの意見やアイデアを提案することも必要です。そのためには日本人同士、あるいは外国人船員達とお互いの人格を尊重し合い、信頼し合うことができる関係を構築することが船員に必要なリーダーシップの要素のひとつです。
3. 自ら解決策を見出し実践する力
船では種々多様な問題が毎日のように発生します。まさに「事故は現場で起こっている。」です。困難な局面を打破するためには自らが先頭に立ち、自らの経験や知識に基づいて問題を解決していく必要があります。そのためには日頃から現場の状況把握や非常時に対応できる周到な準備や訓練が必要です。船員が活躍する職場は結果の良し悪しが明白になり、結果責任を問われる厳しい場所です。部下と共に全力を出し切るためには、自らが率先して手本となる思考を働かせ、行動を取ることが船員に必要なリーダーシップの要素のひとつです。
4. いかなる場合でも当事者意識を持つ
発生したトラブルについて自分の管理・監督責任を棚に上げて他人を責めたり、会社のせいにしたりしてはいけません。自分の担当でないからと無関心でいたり、部下が勝手にやっていることだからと放置したり、船長の仕事だからと非協力的な態度をとってはいけません。船には自律自責型人間が必要です。船は運命共同体です。船内のあらゆるトラブルや事象を前向きにとらえて積極的に関わっていくことが船員に必要なリーダーシップの要素のひとつです。
5. 難題に向かっていく姿勢
船は自己完結性を求められる職場です。目の前にある幾多の困難から逃げることはできません。船員達で問題を解決するしかないのです。トラブル発生時は誰もが不安となります。先頭に立つリーダーが恐れていては部下にまで、その雰囲気が伝染してしまいます。ピンチはチャンスの始まりという意識で、逆境に立ち向かうことが必要です。論理的根拠に基づき沈着冷静に、的確かつ迅速に行動することが、船員に必要なリーダーシップのひとつです。