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ビスの表面にある小さな「えくぼ」の意味

船内各所で毎日、目にしている『ボルトとナット』の話です。

皆さんはボルト&ナットを取り付けたり、外したりするときにアジャスタブルレンチを使用していませんか?航海士を含めて多くの甲板部の人達はすぐにアジャスタブルレンチを使用します。なぜなら、ボルト・ナットのサイズを調べずに、1本でどんなサイズにも使えるからです。しかし、機関部の人から言わせるとそれは邪道です。本来はそのボルト&ナットのサイズに合致したメガネレンチやソケットレンチを使用すべきです。

アジャスタブルレンチでは力が入らず、少し緩みがあると滑ってしまって、ボルト&ナットの頭が丸くなってしまい、正規のレンチが使えなくなってしまうことがよくあります。ですから17mmのボルトには17mmのレンチを、21mmのボルトには21mmのレンチを使うようにしましょう。以下の記事で紹介したように、ボルトを見ただけで何ミリのボルトかを言い当てるのはかなりの熟練が必要です。サイズがわからければ、道具箱に一通りの種類のレンチを入れて現場へ持って行きましょう。

24ミリのボルトって、どこのサイズが24ミリ?

では、皆さんはボルトにミリネジ(ミリボルト)とインチネジ(インチボルト)の2種類があることを知っていますか?19mmサイズや24mmサイズのスパナでボルトを緩めようとして、スパナがボルト頭のサイズに微妙に合わずに大きかったり、小さかったりした経験はありませんか?おそらくそのボルトがインチボルトだから、スパナのサイズが合わないのです。また、ミリネジ用のナットやボルト穴に無理やりにインチネジをねじ込むとネジ穴がつぶれてしまいます。同じサイズに見えるミリネジとインチネジですが、微妙にサイズが異なっているのです。ミリボルトにインチナットを取り付けると数回転は合いますが、2、3回転まわすと固くなってしまいます。それを無理してまわすと、ボルト・ナットのネジを壊すことになります。

ミリボルトはmm単位のサイズのボルト頭であり、ネジのピッチもmm単位です。そしてインチボルトはボルト頭サイズやネジのピッチがInch単位です。IMPAカタログにインチ単位の3/4や5/8と書かれているのを見たことがありませんか?3/4は3/4×2.54=19mmという計算になります。ネジのピッチは隣接したネジ山とネジ山の間の距離で、ネジが一回転したときに進む距離で、ちょうどプロペラのPitchと同じ定義です。

ピッチがわからないボルトのピッチを調べるときにピッチゲージ(Pitch Gauge)を使用します。ピッチゲージを使用するときに注意するのは、ミリボルトにはミリボルト用のピッチゲージを、インチボルトにはインチボルト用のピッチゲージを使用しなければいけないことです。ミリボルト用のピッチゲージはミリ単位で表示しています。ネジ山とネジ山の距離を1.0や1.2というミリ単位を使ってミリボルトのピッチを表します。一方、インチボルト用のピッチゲージは20や25という単位を使ってピッチを表しています。これはGauge Wireのメッシュと同じ単位で、1インチ当たりに何個のネジ山があるかでピッチを表します。つまりインチボルトのピッチ20と言えば、1インチ当たりにネジ山が20個あるインチボルトという意味です。

60メッシュの金網と言うけれど、60の意味は?

さらに船橋の航海計器などに使用されているネジの頭に下写真のように小さなえくぼのようなくぼみが一つあるのを知っていますか?一度、船橋内を見渡してネジの頭を見てください。小さいくぼみがあるネジが見つかるはずです。このくぼみにはれっきとした意味があるのです。実はこの「えくぼ」はISO規格のミリネジの印なのです。

今は「えくぼ」表示は義務ではないのですが、昔は混乱を避けるために義務化されていました。また、大きなボルトの頭に「M」と刻印されてミリボルトであることを示しているものがあります。もちろん「えくぼ」や「M」のないミリネジもたくさんあるので、それらがないからといって全てインチネジと判断してはいけません。さらにネジの規格として「PT」と「PF」という記号が表示されているものがあります。この「PT」はテーパー型(先細になっている)ネジを意味し、「PF」は平行型ネジを意味しています。

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