時代と共にダイモからテプラへ、テプラから立体ステンシルへ

『船内の表示』に関する話です。

船内各所の銘板表示をよく見て下さい。ストアー入口やベンチレーターの銘板が剥がれたり、ペイントが塗られて読めなくなったりしている船を多く見かけます。安全維持と船体美観という二つの点から、船上構造物にはきれいで見易い表示が求められます。これはバルブやパイプに識別色を使用するのと同じように安全維持という観点から非常に重要なことです。

昔の船では各機器やパイプにはほとんど何も表示がされていませんでした。その理由の一つが「表示しなくても誰でもわかっている」という発想です。昔のように熟練した日本人船員が大勢乗船している船では、わかりきっている場所には表示が必要なかったのかも知れません。

しかし、昨今の船員のレベルは種々です。優秀な船員もいれば、とんでもない船員もいます。ですから、とんでもないレベルの船員のためにも各所に表示や注意書きが必要なのです。誰でも知っていて当たり前、表示していなくても大丈夫という考え方は過去のことです。今は混乗船となり、乗組員のレベル差、経験差が非常に大きくなっています。

レベルの低い人、経験の無い人でも容易にわかるようにするために明確な表示が必要なのです。言葉は悪いですが、「猿でもわかる」ようにすることが必要です。いざという時に一々図面で調べたり、他の人に尋ねたりする必要がないように万全な作業環境を準備しましょう。さらに日本語表示だけでは不十分です。共通使用言語である英語で表示しましょう。

普通、ステンシルと言えば、アルファベットのステンシル文字板を使用するか、使用済みチャートで文字を形取りして使用していますが、最近では立体的なステンシルを使用している船があります。これはなかなかの優れものだと思います。市販の立体ステンシルを購入するか、又は自分達でラバーパッキンから切り抜いて立体ステンシルを作成し、これを現場に貼り付けるのです。

立体的になっているので、たとえペイントで塗りつぶされても完全に消えることはありません。盛り上がった文字を上から簡単に塗り直すことができます。塗装や汚れで消えてしまっては困る重要なマークや銘板に施しているビード溶接と同じ役割を果たします。

例えば、SOLASでは「IMO(船舶識別)番号はビード溶接又はパンチング処理で表示する」と規定されています。船が海賊に乗っ取られて船名を書き換えられたとしても、簡単にIMO番号が消すことができないようにするためにビード溶接又はパンチング処理をするのです。ビード溶接と同様にパンチング(Punching)処理をすれば、文字が塗りつぶされても文字の形は残ります。ちなみにパンチング処理のことを「パンチ(ポンチ)を打つ」といいます。

また、昔は「ダイモ」(商品名)を船内の各所表示に使用していましたが、最近は「テプラ」(商品名)を多くの船で利用しています。「ダイモ」は殆ど見かけなくなり、今はまさに「テプラ」の時代です。もしかして若い人は「テプラ」は知っていても「ダイモ」を知らない人がいるかも知れません。しかし、今でもIMPAカタログに「ダイモ」が掲載されているから驚きです。「テプラ」は非常に優れもので、船内だけでなく船外の表示にも使用が可能です。「テプラ」は2、3年で少し色あせてきますが、潮風にさらされても簡単には剥がれません。

ですから、ステンシルを作成する時間的余裕がない場合は、「テプラ」を貼り付ければ十分です。ステンシル作業の10分の1程度の労力と時間で済みます。実は私も「テプラ」大好き人間で、ここ数年は船で多いに利用させてもらっています。先ほど言ったように、安全維持のために誰にでも簡単にわかるようにくどいほど船内各所にテプラで表示して下さい。ほとんどの場合、表示し過ぎということはないはずです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA