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ところ変われば、立場も変わる

船の業務にかかわる様々な『関係者の立場や見方』に関する話です。

例えば、LNG船の荷役について考えて見ましょう。LNG船の積荷役や揚荷役においては、マニホールドに金網、いわゆるストレーナーを装着します。このストレーナによって、LNGカーゴ に混入しているDebris等異物を補足して陸上タンクや船のカーゴタンクへの異物混入を防止しています。荷役終了後に2/Oが陸上担当者と一緒になってストレーナーをManifoldのLiquid Lineから取り外して、ストレーナー内に異物が入っていないかどうかを目視点検します。ここで言いたいことは積地と揚地で同じに見えるストレーナーチェックという作業であっても本船側の陸側に対する立場がまったく逆転することです。「見張る立場」から「見張られる立場」、「見張られる立場」から「見張る立場」へと全く反対の立場になります。

積地では陸上タンクから異物が混入していない良質のカーゴを船へ積むという責任が陸上側にあります。そのため、船側は陸上タンクからのカーゴに異物が混入していないかどうかを厳しくチェックする立場となります。いわゆる船側は「見張る立場」です。もし船側がストレーナーで異物を見つければLoading Terminalに抗議しなければいけません。当然、Protest Letterを作成して提出することになります。

ところが、揚地では立場がまったく逆転します。今度は船側が船から陸上タンクへ良質のカーゴを移送する責任を有します。陸上ターミナル関係者は船からのカーゴに異物が混入していないかどうかをストレーナー点検時に厳しくチェックします。私達船側はいわゆる「見張られる立場」となります。もし、ストレーナーに異物が入っていれば、荷受人から強くクレームされるのです。

船の仕事は単純に荷物を運べば良いというだけでなく、お客さんの荷物を運んでいることを念頭に入れておく必要があります。ですから、自船の置かれた立場を理解し、外部関係者との利害関係を正確に把握しておくことが非常に重要です。若い頃は、どんな立場の人がどのように本船と関わっているのか十分に理解できないことばかりだと思います。多くの経験をして船陸組織の役割や関係を把握できるようになるまでは、訪船して来る人物の立場や権限を理解して対応することは難しいでしょう。

訪船者の顔を見ると、どの人も年配で偉そうに見えてしまい、誰が何の役割の人かがちんぷんかんぷんでも若い頃は問題ありません。少しずつ経験を積み重ねて理解を深めていきましょう。若手航海士と呼ばれなくなる頃までに船に関わっている人々の役割、立場を完璧に知れば良いのですから焦ることはありません。

入港すると陸上から非常に多くの関係者が乗船して来ます。例えば、Charterer (傭船者)、Owner (船主)、Consignor / Seller (荷送人/売主)、Consignee/Buyer (荷受人/買主)、Terminal関係者、Surveyor、Agent (代理店:Charterer / Owner / Manning)、Customs / Immigration Officer (税関)、海事代理士、Superintendent (担当監督)、Manning Company (船員配乗会社)、Management Company (船舶管理会社)、Store Supplier (船用品納入業者)、Ship’s Chandler (船食業者)、Service Engineer、各種検査の検査員、本社関係者、組合関係者等々、様々な組織、会社の人物が船の運航に携っています。これらの人達と自分がどういう立場で対応すべきかをこれから少しずつ理解を深めて行ってください。焦る必要はありません。

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