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フランジがないくねくね曲がったパイプが詰まったら・・・

『船内のトイレに絶対に流してはいけない物』の話です。

機関室に設置されているSewage(汚水処理装置)のタンクの掃除をしていて、何度か煙草の吸殻を見つけたことがあります。Sewageのタンクには居室・公室のトイレの排水だけが流れてくるのですから、誰かが船内のトイレの便器に煙草の吸殻を流したことは間違いありません。

他の場所から煙草がSewageタンクへ混入する可能性はありません。犯人捜しではないですが、煙草の銘柄を特定したいところです。しかし、残念ながら、Sewageタンクの汚水に何日もつかっていた煙草の吸殻は紙部分がなくなってフィルターだけになっており、煙草の銘柄は特定できません。

乗組員にその事実を話すと、すぐに「停泊中に訪船した業者が吸っていたのだろう。」と責任転嫁をはかります。真実は闇の中ですが、乗組員がついつい居室で煙草を吸い、その処理に吸殻をトイレの便器に流すことも考えられます。また、乗組員がSmoking Roomで煙草を吸ったあとに、くわえ煙草のまま公室便所で用を足し、そのまま吸殻を便器に流してしまう可能性も否定できません。いずれにせよ、Sewageタンクに流れ込んでいるという事実を看過することはできません。火気使用を厳しく制限している船内では大問題です。特に危険物積載船では絶対に許されない行為です。

Soil Lineのパイプがゴミや汚物で詰まることがときどきあります。パイプが直管であれば比較的容易にパイプを掃除することが可能です。また、パイプの途中にフランジがあれば、パイプを外して掃除すればOKです。しかし、何十メートルもくねくね曲がった1本もののパイプが詰まったときは一苦労です。最近の船はフランジ継手を極力減らして、溶接継手が多用されています。そのため、短いパイプに分割できない長尺物の曲がったパイプが多く、パイプ掃除も容易ではありません。

パイプが詰まったときによく使う道具がパイプ掃除用Wireです。このワイヤーをパイプ内に入るところまで挿入し、手元のハンドルをまわせば、ワイヤー先端がくるくる回って、詰まったものをやわらかくしてくれます。専用のパイプ掃除用Wireがなければ、太目の雑ワイヤーをパイプに入れて、少しずつ詰まりを取ります。詰まりを取り除く他の方法として、パイプに圧縮空気を注入する方法があります。圧縮空気は圧力が6〜7kg/cm2ぐらいはありますから、運が良ければ、すっぽりと詰まり物が取れます。

昔は造水装置の能力が低かったのでしょうか、清水が非常に貴重で、無制限には使用できないため、トイレの水も海水を使用していました。最近の練習船はどうか知りませんが、昔の帆船では「洗濯日課」という洗濯する日を設けてそれ以外の日には洗濯できませんでした。それぐらい清水が貴重でした。昔の船のようにトイレの水に海水を使用していると白い便器が直ぐに黄ばんできます。そのため塩酸系の強い薬品で便器を掃除したものです。そして、便所の水に海水を使用している船では機関室にそれ専用の「Sanitary Pump」という名前のポンプがありました。

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