最近の船員にとってオーバーフロー気味な『事務作業』の話です。
航海士が作成すべき書類はこれでもかというほど山のようにあります。若い航海士達はさぞや辟易(へきえき)していることでしょう。しかし、避けて通れない現実で、逃げずに正面から立ち向かうしかありません。入港手続き書類、荷役関連書類、安全チェックリスト、ログブック&アブログ等々、処理しても処理してもいっこうに書類の山は減りません。少し手を抜いてサボると机の上の書類の山が崩れるほど溜まってしまいます。そんな事務作業で特に最近、感じることは昔よりも書類の記入ミスが明らかに多くなったことです。
コピー機、ワープロ、パソコンがなかった時代には、それこそ1字でも書き間違えれば、最初から手書きしなおさなければならず、大変な労力が必要でした。そのため、一字たりとも間違ってはいけないという必死の思いで、一語一語、一文一文に集中して慎重かつ丁寧に書いていました。当然のことながら、下書きしてから書類を作成していました。ところが最近はWord & Excelの時代なので、あっという間に書類を作成することができます。そのため、記入間違いをしてはいけないという慎重さや、間違いがないか見直す作業がかなり疎かになっているようです。
WordやExcelを用いれば、辞書を引かなくても日本語の文章を書くことができます。そのため、入力間違いも多くなっています。平気で誤字・脱字のまま書類を作成し、提出してしまいます。また、過去のファイルをコピーして使用することが多いため、修正し忘れて古いデータのままといった間違いも目立ちます。また、間違っても簡単に打ち直してプリントアウトすれば問題解決となってしまうので、ミスを絶対にしないという気持ちがどうしても薄れています。しかし、書類というものは対外的な公文書はもちろんのこと、船内書類でさえミスがあってはいけません。残念ながら最近は会社から送られてくる公文書でさえ誤字・脱字が多くミスが目立ちます。
人間は誰しも間違いを起こします。文章やデータを数多く入力すると、必ずと言っていいほどミスを犯してしまいます。それを最小限にする方法は、言うまでもなく完成した文章をもう一度見直すことです。作成し終わった段階で必ずどこかが間違っていると思って、自分の作った書類を自分自身で見直す習慣をつけることです。おそらくミスが少ないと言われる人は、当人が何度も何度も自分で見直しているはずです。
その努力の結果でミスのない書類となっているのです。書類ミスが少ないということはその人の評価に直結します。絶対的な評価基準ではありませんが、書類ミスが少ない人は仕事ができる人、仕事ができる人は書類ミスが少ないという相関関係はある程度成り立つはずです。逆もまた真なりで、書類ミスが多い人は他の仕事でもミスが多いのではないでしょうか。
文章を作成した後に内容をもう一度見直すコツは2つあります。一つ目は紙にプリントアウトして声に出して読んでみることです。パソコンの画面ばかり見て文章を書いていると、何度読み直しても自分の文章に違和感がなくなり、間違いや文章の体裁のまずさに気が付かなくなります。印刷して声に出して読んでみれば、不思議なことに今まで気がつかなかった誤りや文章のまずさが目に付くものです。二つ目のコツは一通り書類が出来上がってから、しばらく時間をあけてチェックし直すことです。
できるだけ時間を置いて、頭をリフレッシュしてから見直してみて下さい。たとえ1時間でも経ってから、自分の書いた文章を読み直すと、今まで気がつかなかった誤字・脱字、説明不足な部分、くどい内容等自分の文章のまずさに気づくはずです。