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航海士がドラフト9.6mと書いて平気では困ります

『数字の持つ意味』について考えてみましょう。

数字の0(ゼロ)の意味をあまり意識しない外国人航海士を時々見かけます。例えばあるQ/Mが気圧の記録で「1018」と記入し、それをLog Bookに同じ「1018」と平気で書き写している外国人2/Oがいました。皆さんは気圧欄に「1018」と記入して違和感を持ちますか?

1018.0と書くべきところを1018と書いて何とも思わない人になっていませんか?日本円で1018は1018円を意味しており問題ないのですが、気圧を1018では不正確です。1018と1018.0ではその持つ意味が全然違います。もちろん1018と1018.0は絶対値としては同じかもしれませんが、その数が持つ数学的意味は全く異なります。

要は有効数字(Significant Digit)を考慮する必要があるのです。学校でも習ったと思いますが、整数と有効数字小数点第1位では、たとえ値の大きさが同じとしても1018と1018.0では持つ意味合いがまったく異なります。1018は小数点以下第1位の数字が隠れているのであって、1018.1かもしれないし、1018.4かもしれません。四捨五入すれば1018.1も1018.4も同じ1018です。

ところが1018.0は間違いなく1018.0であり、決して1018.1でも1018.4でもありません。同じように入港ドラフトを平気で9.6mと書く3/Oがいますが、9.60mが正解です。9.6 mだと10cm単位でドラフトを読んでいることになります。プロの3/Oはもちろん1cm単位のドラフトを記入して下さい。ご承知の通り、大型船ではたった喫水1cm分が積荷やバラスト100トンに相当します。この有効数字について外国人航海士に説明するのが、結構難しく、なかなか理解してもらえず、困ったことが何度もあります。

Excelで小数点以下第1位までしか表示しない設定になっていれば9.60のゼロが表示さず、9.6と表示されます。もし、小数点以下第2位を有効数字とする場合は、設定を変更して9.60と表示するようにしてください。航海士としては、ここまで細かな気配りが必要です。ちなみに、数字のゼロ“0”の概念を発見したのは古代インド人だそうです。だからインド人はあれだけITや数字に強い民族なのかも知れません。

次に時間の2400と0000の区別はどうでしょうか? 時間の24時は00時のことです。
例えば3日の24時00分と4日の00時00分は同じ時間を表します。しかし同じ時間であっても日付が3日と4日では大違いです。ですから契約日を取り決めるときなど、日付が異なると大問題となる場合には、わざと00:01を使用し、00:00の使用を避ける場合もあります。一般的には23:59の次は24:00ではなく00:00とすることが多いようです。このように普段は取るに足らないような話ですが、航海士ならば数字にこだわることも必要です。

日付についても「3日」と書くところをわざわざ「03日」とするには意味があります。もちろん3月3日と書いても何も問題ありません。しかし、日付を絶対に間違ってはいけない場合、3月3日の3日の前に“0”を加えるべきです。3日とだけ書くと、3の前に1や2という数字の入れ忘れがある可能性もゼロではありません。3月13日とワープロで入力するときに“1”を打ち損じたのかも知れません。そんな心配を払拭するためには0を前に加えて03日とすれば良いのです。

そうすれば、自分は13日でも23日でもなく間違いなく3日を入力したということが100%保証されます。緯度経度の表示についても同じです。緯度を記録するときに9-30Nと書いていませんか?本来は09-30Nと書くべきです。コース90度を<90>ではなく、<090>と書くのと同じことです。数字「9」の前の数字が「1」ではなく「0」であることを示す必要があります。このように航海士は数字の“ゼロ”の持つ意味を理解し、十分に配慮すべきです。

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