多目に入れたほうが良いか、少な目で良いか

船員が毎日飲んでいる飲料水の『水質検査』の話です。

日本籍船では、飲料水の水質検査を少なくとも1年に1回受けなければいけないことを皆さんは知っているはずです。これは「船員労働安全衛生規則」に規定されています。さらに同規則によって本船で遊離残留塩素濃度を毎月1回計測し、0.1ppm以上あることを確認しなければいけません。

では外国籍船ではどのように規定されているでしょうか?外国籍船でも日本人船員が乗船する船には、1年に1回の飲料水の水質検査が必要です。理由は船主協会と全日本海員組合が協議し、外国籍船も日本籍船と同様に年1回の飲料水検査の実施、月1回の遊離残留塩素濃度の計測を行うことに両者が合意しているからです。

飲料水検査は、船で採取したサンプル水を陸上機関が検査するのですが、不適合(不合格)となり、再検査が必要となることが度々あります。最も多い不合格の理由は「一般細菌」が基準数を超えていることです。1ml中に「一般細菌」が100個以下であることが合格基準です。では、「一般細菌」の定義は何でしょうか? 一般細菌という名の細菌がいるわけではなくありません。一般細菌とは病原菌でない無害な雑菌のことなのです。汚染を受けていない飲料水は一般細菌数が少ないので、その個数を汚染の危険性を示す指標として用いているのです。

私の実体験ですが、2回連続して飲料水検査に不合格したことがあります。3回目で何とか合格しなければと思い、飲料水タンクのエアー抜きから殺菌剤(バイゲンラックス)を多過ぎるぐらい投入した経験があります。おかげさまで「三度目の正直」ではないですが、ようやく合格となりました。気のせいか昔は飲料水検査で不合格ということがあまりなかったような気がします。昔の飲料水が今よりもきれいだったのかも知れません。あるいは昔の検査方法が甘かったのかも知れません。

一般細菌を殺す消毒剤として「バイゲンラックス」を飲料水タンクに投入しますが、私の経験ではある程度多めにバイゲンラックスを投入しないと、残留塩素濃度が規定値以上になりません。但し、残留塩素濃度を高めようと多目に入れすぎると、今度はカルキのにおいがきつくなります。その加減が結構難しかった記憶があります。「カルキ」と言いましたが、皆さんはカルキといってわかりますか? 昔はプールに入れる消毒剤のことをカルキと言っていました。語源はオランダ語のKalk(石灰)です。「カルキの匂い」とは、家庭で使用する漂白剤と一緒です。

昔から船の水は腐りにくいと言われています。機関室内のあれだけ高温環境にありながら、船の飲料水が腐らないことは不思議です。理由は定かではありませんが、良く言われるのが、船は陸上と違って常に揺れて水が対流するので腐り難いと言います。陸上の飲料水タンクのように揺れないタンクで数か月間経過した飲料水は、腐って飲めないのかもしれません。

昔の飲料水タンクの塗装は水セメントという材質を使用しており、アルカリ性が強く塗装後は何度もアク抜きのために漲水、排水を繰り返す必要がありました。しかし最近は清水タンク専用のペイントがあるのでそれを塗装すれば、殆どアク抜き作業は不要です。但し、塗装したばかりの飲料水タンクはペイントに混ぜたシンナーが流出するために臭気が残ることがあります。飲料水タンクを塗装後に出来る限り暖かい状態にしておけばシンナー臭が抜けるのも早くなります。また、出来る限りシンナーを混ぜる必要のないペイントを使えば確実です。

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