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なんにも船長、いうこと機関長の時代は終わりました

私の若い頃からの夢は船員になること、そして最終目標は「グレートキャプテン」になることでした。そんな私が憧れて、目標としてきた『船長像』を紹介します。

昔は船長や機関長のことを皮肉って「なんにもせんちょう(船長)、いうこときかんちょう(機関長)」と言ったものです。働かない船長のことは、仕事船長(しごとせんちょう)とも言いました。昔の船長は命令だけ下し、現場の仕事は部下に任せておけば船は動くというイメージでした。しかし、今は時代も移り変わり「なんでもすぐやる船長・機関長/部下と一緒に仕事をする船長・機関長」の時代です。

一方、昔から船内の雰囲気が船長や機関長の人格や考え方に大きく影響されることは周知の事実です。船長はMuster ListのDutyにもあるように指揮者(Commander)です。オーケストラで言えばまさに指揮者です。同じ曲を演奏しても指揮者によって全然違った感じの曲となるように良い船になるか悪い船になるかは船長の良し悪しによると言っても過言ではありません。それぐらい船長の影響力が大きいのです。もちろん若い航海士の皆さんの影響も無視できません。それ相応に船内の雰囲気に影響すると思って発言・行動して下さい。

例えば、従業員20~30人の会社の社長さんが無能であったり、個人的に性格や価値観が自分と合わなかったりしたら、一大事です。その会社を去る日が近いかも知れません。船の場合も同様です。いえ、船の場合はそれ以上です。船では公的な時間以外に私的な時間でもある程度付き合っていくこととなるのですから、なおさらです。

船の場合は気の合わない船長と乗り合わせても長くてもせいぜい半年間程度のお付き合いなので、じっと我慢することです。陸上のように何年間も付き合うわけではありません。せめてその船長を反面教師として、「船長、あなたのようにはならない、いつか越えてやる。」という気持ちの余裕が欲しいものです。実際には「言うは易く、行うは難し」でしょうが・・・

私は今までに約50名の船長と一緒に乗船して、その人となりを見てきました。今思い返して、私なりの評価で判断した理想の船長としてベスト3人をあげることができます。あえて実名は公表しませんが、その3人の人柄についてあらためて考えると、共通した理想の船長像が浮かび上がります。四文字熟語で言い表すと「泰然自若」「自由闊達」「質実剛健」です。ちょっと説明するのが難しいですが、要するにおちつきはらって物事に動じなく、度量が大きく、強い信念を持って乗組員を良い方向へ導いていく頼もしい船長です。

私の理想とする船長タイプをさらに具体的に述べると以下の通りとなります。

  1. 強いリーダーシップを発揮
    (何事にも動じない度胸があり、豪快である。場合によっては、人の内面にまで踏み込んで問題を解決するほど強引である。)
  2. 判断や言動が明快
    (誰に対しても何事に対しても公平である。自分が何を考え、何をしようとしているかを周囲の人間が理解し易い。性格的にはさわやか系。)
  3. 技術力が高い
    (根性論や精神論だけではなく、自らの経験や技術的根拠に基づいて適切な指示、アドバイスを部下に与える。口先だけの理想論を語らない。)
  4. 巧みなユーモア感を持っている
    (周囲をリラックスさせ、部下が能力を発揮し易い雰囲気を作り出す。アメとムチの使い分けがうまい。)

よく考えると、これらの資質・素養は何も船長だけに求められているものではありません。若手航海士の皆さんにも求められている資質・素養です。これらは一朝一夕では簡単に身につかないかも知れません。実は私も理想とする3人の船長に追い着き、追い越そうと日々努力しているのですが、これがなかなか難しいのです。みなさんも、日頃から上位職の人の仕事振りや生活をじっくり観察し、尊敬できる先輩を見つけて、その人を目標として、一日も早く余裕しゃくしゃくのベテラン航海士になって下さい。そして、誰からも理想とされるグレートキャプテンになって下さい。

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