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一人前になるには、桃栗三年柿八年、潮風三年、波八年

長年の経験を経て、その道に熟達した人のことを英語でベテラン(Veteran)と言います。その『ベテラン』についての話です。

どの仕事の世界でも「ベテラン」と呼ばれる人は物事の先を読むことに長けています。広辞苑によると「ベテラン」とは「その専門での経験を積み、技術・判断力の特別すぐれた人」のことです。ですからベテランは長年の経験で巧みな技術を身につけただけでなく、的確で迅速な判断力が養われている人なのです。ベテランの人は常に「ああすれば、こうなる」と先の先まで考えが及びます。その結果、ベテランの人は日常業務で起こるトラブルを未然に防いだり、トラブルが発生しても想定内であり、被害を最小限に留めることに長けているのです。

若い航海士の経験が少ないことはしかたありません。若いあなたは筋書きにない事象が突発的に発生した場合、上手く対処することができますか?目の前の与えられた仕事、課題を消化することで精一杯でしょうか?私も若い頃の自分を思い出すと、よく船長さんに「3/O、何をぼーと突っ立っているんだ。いつも先々を考えて、てきぱきと動いて仕事をしろ!」と度々怒鳴られました。皆さんはどうでしょうか?心配しなくても大丈夫です。様々な経験を積み重ねることにより、余裕ができ、視野が広くなり、先を見通す力が徐々に身に付いてきます。そして誰もがベテラン航海士になっていくのです。

入港が近づいて船長が船橋に上がってきたときに、船長に何も報告しない3/Oがいます。その3/Oは船長に船橋の現状説明や報告をする必要がないとでも思っているのでしょうか。それとも船長が船橋に上がってきてすぐに何を知りたいか、何をするのかがわからないため、何を報告して良いのかわからないのかも知れません。本船の現在位置、船速、周囲の他船の状況、風や視程の状況等船長が知りたいことをいち早く察知し、船長に聞かれる前にすべてを報告できるようになれば一人前です。

皆さんも、いずれは有能な航海士(部下)となり、一等航海士や船長(上司)が今どういう状況に置かれて、何を思案し、何の情報が欲しいのかを察知し、言われなくても適切な情報や助言を提供できるようになるでしょう。若い頃は怒鳴られて、失敗して成長するものです。大いに怒られて、失敗して、それを自分の肥やしにして頑張って下さい。ある人の言葉を借りると、「桃栗三年柿八年、潮風三年波八年!」です。

若い人でもときには上司に反論や意見を言うとき、言うべきときがあります。そんなときは「お言葉を返すようですが」という言葉を添えて相手(上司)に対して丁寧に反論しましょう。英語では「With all due respect」と言います。会社や船の会議で各人の忌憚ない意見が噴出して議論が前へ進まないということは殆どありません。ほとんどの会議が上司の方針に従って形式的に流れ、会議に参加した人達のコンセンサスを得たという既成事実で物事が進められていきます。ここで皆さんにあえて言いますが、会議で黙っていてはいけません。自分の意見があるのなら、遠慮なく言いたいことを言うべきです。

そういっている私が意見を積極的に言う方ではないので、この話に説得力は全くありません。しかし、皆さんには私のように貝にならずに、自分の意見・アイデアをどんどん上司にぶつけてほしいものです。そのときに物の言い方一つで相手が受ける印象が好印象にも悪印象にもなるのです。「お言葉を返すようですが」と言われるのと「いや、違うと思います。」とでは言われた人の印象もずいぶん異なります。丁寧な言葉で、理路整然と反論したり、冷静に自分の意見を言える人になって下さい。

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