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水漏れ防止のために、計測前に開けて計測後は閉める

タンクのレベルを計測するために使用する『グラスゲージ』にまつわるトラブルの話です。

ある港で補水して清水タンクを満杯にしました。ところが次の日にCarpenter担当の甲板手がサウンディングすると、数量が100トン近く減ってしまっているではありませんか。前日Fullであった清水が一晩で100トン近くなくなっているのです。船内は大騒ぎです。居住区、甲板上の清水ラインの漏えいチェック、空き部屋のトイレの点検、機関プラントの清水消費量チェック等々。そして、判明した清水量減少の原因は、単純なミスでした。

甲板手が清水タンクのグラスゲージを読む時にOpen/Shutのコックが閉まった状態のままで、水位を読んでしまったのです。グラスゲージが破損した場合、タンク内の水が漏洩してしまうので、通常はグラスゲージのコックはShutの位置にしており、タンクの水位を読むときだけOpenするのが基本です。ですからグラスゲージを読む時はコックをOpenにして読まなければいけません。これは他のタンクでも同様です。それを知らずにコックをShutしたままグラスゲージの水位を読んでしまうと、このような人騒がせなトラブルとなります。

船によってはグラスゲージのコックが下の写真のようにスプリング式になっており、レベルを読むときはスプリングを足で踏んで液面が落ち着いてから読むタイプがあります。昔はこのスプリングを針金で縛りつけて押さえたままにして常に開いている状態にしている船がありました。もし、グラスゲージからの漏洩があった場合、タンクから多量に漏洩する危険があるので、スプリング式コックを針金で固定するのは厳禁です。

毎日の飲料水量や清水量を計測するのは大工(Carpenter)の仕事です。最近の船では荷役制御室のコンピューターにON-Lineでバラストタンクや清水タンクのレベルや数量が表示されています。そのためいちいち機関室内の飲料水タンクや清水タンクのゲージを読みに行かなくても良い便利な時代となりました。しかし、現場のタンクのゲージを見なくても良いのでしょうか?コンピューターより信頼が高いのは勿論、現場の水位計です。

毎日とは言いませんが、ときどき現場で実際の残量を確認することも必要です。今後は下船まで飲料水タンクがどこにあるのか知らない、現場を見に行ったことがない甲板部職員・部員がでてくるかも知れません。このように各機器・タンクの遠隔制御・監視ができる便利さが現場力の低下につながっているとも言えます。飲料水は現場のタンクに入っており、飲料水ポンプや飲料水用圧力タンクがあるのです。飲料水が蛇口から勝手にでてくるわけではありません。航海士ならばタンクから居室の蛇口までの飲料水の経路を知っておく必要があります。

ちなみに、皆さんは飲料水の1日当たりの消費量が幾らぐらいか知っていますか?大型外航船の場合、0.5~1.0トン/dayです。1月で20~30トンです。航海士として、この数字は常識的に知っておかなければいけません。ある船で飲料水が減らずに問題となったことがありました。毎日カーペンターが計測するサウンディングノートを見ると、飲料水が1月以上の間、ほとんど減っていないことに気がつきました。そんなことはあり得ません。毎日確実に0.5トン以上は消費しているはずです。

調査すると、造水器からDW Tankへ供給するラインのバルブが漏れていることが判明しました。毎日、少しずつ造水が飲料水タンクへ入っていたのです。航海士や甲板部員が1か月間も飲料水量が減っていないことに気が付かなかったことは大問題です。チェーンロッカー、清水タンク、バラストタンクのレベル変化に異常がないかどうか毎日確認するという基本を忘れてはいけません。

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