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サンドブラストの数字が大きくなるほど、船体はピカピカ

入渠中に実施する『船底塗装』の話です。

船底に付いた貝殻や海藻をきれいに除去して塗装できるのは、もちろんDry Dockに入渠しているタイミングしかありません。入渠時にDry Dockで船底塗装する場合、下地処理としてサンドブラスト(Sandblast)を実施します。サンドブラスト作業は特殊な砂を専用の機械により高圧で外板に吹き付けて海洋生物や錆を含め古いペイントを剥ぎ取ります。

通常は「Spot Blasting」と言って、錆や海洋生物の付着のはげしい部分だけのBlastingだけで十分ですが、10年に一度程度は外板塗装を総剥ぎする「Full Blasting」を行うこともあります。このFull Blastingについて、ドックオーダーの内容を詳しくみてみると、船底外板の「Hull Cleaning and Painting」の項目にSandblast (SA 2.5)と記載されています。

このSA 2.5という記号と数値は何の意味でしょうか?SAはSandblastですが、数字はスウェーデンで定められた下地処理の程度の基準 (ISO8501-1と同じ) で1.0から3.0までの数字で表し、数字が大きくなるほど外板の金属面があらわれるまで、貝殻・海藻や古いペイントをきれいに剥ぎ取るのです。つまり数字が大きいほど強いBlastingということになります。例えばSA 1.0と言えば、付着した海洋生物や浮き錆を取り除く程度の下地処理ですが、SA 3.0となると外板が完全な金属面が見えてピカピカになるまでBlastingすることを意味します。

船で使用されているペイントの種類は非常に多いため、とても覚えきれません。そのために、完成図書のPainting Scheme(別の呼び方:Painting Schedule又はPainting Plan)があります。本船の建造時にどの部分にどんなペイントが使用されているか事細かく記録されています。

「あれ?あのクレーンは少し色が違うけどどんなペイントが使用されているのかな?」とペイントの種類が判らない場合には、この図面(Painting Scheme)を見れば一目瞭然。下地塗装から上塗りまでどんなペイントが塗装されているかが記載されています。例えば居住区のペイントを違う種類のペイントに塗り替える場合に下地塗装にどんな塗料が使用されているかを確認する必要がありますが、この図面を見て調べれば間違いありません。

船底塗装ですが、ドック期間が雨季になると塗装工程が遅れて関係者の悩みの種です。日本の梅雨時のドックは要注意です。何日も雨天が続くと、Dry Dockの期間が予定より遅れてしまい、最悪ドック期間が延長となり、次の港の予定に間に合いません。あまりにも雨天が続く場合、無理を承知で塗装することもあり、出港後に広範囲にわたって塗装が剥離してしまうこともあります。

また、ペルシャ湾のドバイやラスラファンのドックに入るLNG船もありますが、ペルシャ湾のドックでの悩みの種はもちろん雨ではありません。強風で辺り一面に舞っている砂です。風が強い日に船体塗装すると表面に砂が付着した上に塗装することになり、雨の場合と同様にドック出港後にペロリと塗装が剥離することもあるそうです。

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