船学の動画サイトがOPEN!

航海当直 ア・ラ・カルト(Red to Red・Lee Way調整・操舵テスト)

阪口泰弘阪口泰弘

言うまでもなく、『航海当直』は航海士にとって基本中の基本の職務です。それ相応に出来て当たり前、もしも、信用に足るだけの航海当直の技量を発揮できなければ、船長以下乗組員全員から航海士失格の烙印を押されてしまいます。その航海士の「Basic Skill」ともいえる航海当直について焦点を当て、いくつかの初歩的な話を紹介します。

Red to Red

相手船との行き会う際にVHFでお互いの避航動作の意思を確認し合う場面で日本人同士なら日本語で「左舷対左舷」、「右舷対右舷」というところですが、英語では「Port to Port」「Starboard to Starboard」と言います。最近はよく「Red to Red」、「Green to Green」という表現を使って通信している会話を耳にします。左舷対左舷の反航船同士は右転避航の心構えができているので良いですが、右舷対右舷の反航船同士は相手との見合い関係によっては横切り関係気味であったり、右転避航が危険な状況に陥ることもあり要注意です。

左舷灯がRedと言えば、学生の頃、船の舷灯の色を覚えるのに「赤玉ポートワイン」と言ったのを思い出しました。左舷側は赤色ということを簡単に覚えられたものです。今でも販売している赤玉ポートワインは現在のようにワインブームになるはるか昔から超有名なワインでした。最近の美味しい高級ワインに比べれば味のほうは少し甘く、それなりかも知れませんが、私が子供の頃は大衆ワインとして愛飲されていました。

Lee Way調整

最近、何隻かの船で気になることがありました。風や潮流を考慮してコースラインへ乗せるために針路調整するLee Way量(風圧偏移量)をQ/Mが航海士に報告もせず、勝手にAuto Pilotで針路設定を変更しているのです。これはもちろん非常によろしくない不安全行為です。航海当直の責任者である航海士が知らない間に船の針路をQ/Mが変更することは許されるはずがありません。

Q/Mが航海士へ報告してLee Wayを調整することもダメです。本来は航海士自身が船の針路を決定すべきであることは言うまでもありません。ですからQ/Mは「位置がコースラインから〇〇ケーブル、右へ(左へ)流されている。」と航海士への報告で止めるべきです。そして、その報告をもとに、あらゆる状況や条件を勘案して航海士が総合的にLee Way量を調整して、本船船首方向を決定するのが正しい手順です。

操舵テスト

ステアリングテストを実施しているときに3種類の舵角を意識していますか?「操舵スタンドの舵角」、「船橋前面に設置されている舵角指示器の舵角」、「操舵機室の舵に示される舵角」の3種類です。操舵スタンドに表示される舵角は「指示舵角」と呼ばれ、制御系の入力部に相当します。この指示に対応して舵が動きます。そして現場(操舵機室)に表示される舵の角度は「応答舵角」と呼ばれ、制御系の出力部となります。

当たりまえのことですが、入力である操舵スタンドの舵角示度と最終の出力である現場の舵角示度が一致する必要があります。操舵手は船橋前面の舵角指示器を見ながら操舵しているわけですから、この舵角指示器の舵角も実際の舵の角度と一致していることが重要です。実際には操舵スタンドの舵角(指示舵角)と船橋前面の舵角指示器のどちらかが正確であれば、操舵することは可能です。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。