船学の動画サイトがOPEN!

5度以上の誤差を生じれば、修正が必要です

Gyro Compassの信頼性が上がり、その存在意義がかなり希薄になった『Magnet Compass』の話です。

コンパスと言えば、皆さんも一度はマグネット・コンパスのDeviation Curve (Deviation Table)を作成したことがあるはずです。日本語で言うと「自差曲線」です。機会を見つけて少なくとも毎年1回は自差を計測して曲線又は表を作成し、表示しています。そして、毎回描く自差曲線の恰好が微妙に変化しているはずです。また、ときには驚くほどDeviationの値が東西に大きく偏移しているはずです。

自差曲線の作成経験がない人は、航海スケジュールに余裕があるときを見つけて、船長さんに申し出て作成してみては?計測方法は簡単です。気象・海象が穏やかでマグネット・コンパスの羅針盤が大きく揺れていなければ、広い海域で船をゆっくり1回転させて、Gyro Co. 10度〜15度単位でマグネット・コンパスの指度を記録し、測定地点の偏差(Variation)を加除して自差を求めます。

次に自差曲線の最大誤差(最大値)が何度以上になると自差修正しますか?普通は7度が目安ですが、SIRE検査の場合は5度以上になると検査員によっては指摘されます。できれば自差が5度以内に収まるように調整して下さい。また、前回の自差曲線も表示しておけば、自差修正曲線の変化が容易に判ります。

私は経験したことはないですが、乗組員だけでも修正磁石(Corrector Magnet)やフリンダースバー(Flinders Bar)を用いて自差修正できるように取り扱い説明書には修正手順が記載されています。最近は、日本コンパスアジャスタ協会から認定を受けた専門家が訪船して自差修正してもらえます。私の乗船する船で、自差曲線の誤差が5度以上になったので、ドック出し後の試運転時にCompass Adjusterに自差修正を行ってもらったことがあります。

Compass Adjusterの指定する針路へ数分間航走する間にCompass AdjusterがCompass Deckで自差を調整します。それを360度の範囲内で船を何方向かへ進めて調整し、所要時間30分程度で自差修正が完了しました。そして、修正後半年以内に再び自差が大きくなった場合、保証としてCompass Adjusterから本船乗組員だけで実施できる自差修正方法をアドバイスしてもらえます。なお、余談ですが、磁石にはN極とS極がありますが、N極を赤色、S極を青色で示すのが世界共通です。「赤は北」と覚えておいて下さい。

地球は磁気を帯びているといいますが、それを実感する体験をしたことはありませんか? オーストラリア東岸へ向かう船に乗船しているときに、ある海域で、(ブラウン管の)テレビやパソコンのモニターが磁気による影響のために画面の色がおかしくなったことがあります。皆さんは経験ないでしょうか?このときは「DEGAUSS」又は「Demagnetizer」という消磁器をテレビ画面近くにかざせば直ぐにもとの正常な色合いに戻ります。DEGAUSSという道具がなければ磁石でも十分です。制御室のモニターにはDEGAUSSのボタンが付いているものもあり、ボタンを押すと簡単にもとの綺麗な色合いの画面に戻ります。

この記事が役に立ったら、お気に入りに登録できます。
お気に入り記事はマイページから確認できます。