今、何時? ひょっとして夏時間?

地球を東西に航行する船では必ず行っている『時刻改正』の話です。

諸外国間を航行する商船にとって、時刻改正はつきものです。豪州のダンピアへ入港するときのことです。Pilot Station到着予定1時間15分前にPilotからVHFで呼び出しがありました。当港では、Pilotがヘリコプターで乗船します。通常は20 分前ぐらいに呼び出しがあるのですが、なぜかずいぶん早い時間での呼び出しでした。当時、本船はPilot Stationから8マイル手前を航行していました。

予定通りの時刻に到着する旨をPilotに報告し終わり、しばらく経って、ふと船尾を見るとパイロットが乗ったヘリコプターが今まさにヘリデッキに着陸しようとバタバタ爆音を鳴らしながら接近してくるではありませんか。パイロット乗船予定時刻よりも1時間以上も前なので、もちろん本船側はヘリデッキに要員をスタンバイさせていません。びっくりして時計を見るとPilot乗船予定時刻まで、やはり1時間以上あります。どうしてこんなに早く乗船してきたのか不思議で、理解できませんでした。そしてPilotが船橋に上がってきて、その理由がわかりました。

豪州のこの地域は今まで夏時間を採用していなかったのですが、その年から3年間の試行期間として夏時間を採用していたのです。本船には現地代理店や会社から何ら知らされておらず、その港が夏時間を採用していることを全く知りませんでした。さすがにおおらかなお国柄です。豪州人パイロットは本船がヘリコプター受入れ準備が遅れたことに対して一言も文句を言いませんでした。

私達は夏時間(Summer Time)という言葉で聞き慣れていますが、正式には日光利用時(Daylight Saving Time)といい、節電という経済上の理由から一定期間に一定時間ずらして日光をより多く利用するための措置です。ちなみに日本でも昭和23年から26年まで、この夏時間を実施したことがあるそうですが、なぜか定着しませんでした。また、大国であるロシアでは国内の東西で最大9時間もの時間差があるそうです。

夏時間採用する国や港へ入港するときは、このような時刻改正に関するトラブルがときどき発生します。現地時間と船内時間を確実に整合させて混乱のないようにするためには、UTCを使用すれば間違いありません。UTCを用いれば陸と船の使用時間に時差があっても必ず合致してこの種のトラブルは発生しません。

ちなみに昔は世界標準時と言えば、グリニッジ天文台のデーターを元にしたGMT(Greenwich Mean Time:グリニッジ標準時)でしたが、1972年にセシウム原子時計を用いたUTC(Universal Time Coordinated:協定世界時)に改められました。しかし、使いなれた習慣から依然としてGMTという言葉を使用している人も多いようです。また、日本では明石市の東経135度子午線の時間が日本時間と思っている人が多いかもしれませんが、実際の日本時間は東京都にある原子時計の時刻が基準となっています。

つい最近経験した話です。日本で上陸したインドネシア人2名が夜中の付けタクシー陸発最終便に乗り遅れてしまいました。しかたなく、船から特別に追加タクシーを手配して彼らは帰船できたので事なきを得ましたが、最終便の付けタクシーに乗り遅れるなんて非常識極まりなしです。

彼らに乗り遅れた理由を尋ねると、「腕時計を日本時間に合わせていなかったから、1時間ずれていた。」と説明します。その理由が真実であれ、嘘であれ言い訳にはなりません。時刻改正は船員の常識(Common Sense)です。時刻改正をできない者は船に乗る資格はありません。当然ながら、彼らは一航海の間、上陸禁止となりました。

参考 夏時間の期間を検索世界の時間 (時差) 地図情報

 

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