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アネロイド気圧計のアネロイドって、どういう意味?

台風接近時には、とてもお世話になっている『気圧計』の話を一つ。

どの船もアネロイド型気圧計を搭載していると思います。日本籍船は気象業務法に基づき船舶気象観測・通報が義務付けられています。決して任意の参加ではありません。さらに5年毎の気圧計の点検が必要で、これも義務付けられています。一方、外国籍船は強制ではありませんが、気象庁から可能ならば船舶気象観測・通報を依頼されています。気圧計は船舶気象観測に使用する重要な計測機器ですから5年毎の義務点検以外に少なくとも毎年2回以上(6ヶ月毎程度)の点検を行うよう推奨されています。皆さんの船は6ヶ月毎に点検していますか?

依頼すれば、横浜、名古屋、神戸、札幌、仙台、大阪、福岡及び沖縄の気象台の職員の人が直接訪船して気圧計の点検をして、必要な助言を行ってもらえます。しかし、コンテナ船でない限り、なかなか該当する港に入港しないため、その機会は訪れません。そこで代替え手段としてFaxによる気圧計の誤差を点検する方法があります。点検方法は非常に簡単です。本船の諸データ及び当日の気圧計の実測値を気象庁(気象台)にFax送付するだけです。直ぐに気象庁から本船気圧計の補正値をFaxで返送してもらえます。もちろん、Faxや電子メールによる点検は訪船による点検に比べると、精度が劣ります。


参考
気象測器の点検について気象庁

昔は横浜港や神戸港に寄港する船では検査官(港湾気象官)が訪船して、点検・補正値計測を行っていました。気圧計測時に注意すべき点は、計測時に船橋等の扉が締め切りとなっていた場合、エアコンの風圧により実際の気圧計の指示値より高めの値を指示していることです。せっかく正確な補正値を得るために計測しても誤差が残ってしまいます。ある船では、自船の計測値と気象庁の値が大きく異なったため、貴船の気圧計は壊れているのではないでしょうか?という問い合わせがありました。

計測時には大気と同じ環境を作るのを忘れないで下さい。余談ですが、ある船で気象観測通報について気象庁より注意を受けました。気象観測通報を観測時間前に送信していたのです。観測時間が丁度当直交代時と重なる場合、ついつい自分の当直中に観測・データ送信を済ませようとしますが、正式には観測時間を過ぎてから送信すべきです。皆さんも送信のタイミングについては十分に注意して下さい。


参考
船舶気象観測指針気象庁

 

ちなみに私達が呼び慣れている「アネロイド」の意味は何でしょうか?人名でしょうか?地名でしょうか?実はギリシャ語で「液体でない」という意味なのです。確かに水銀気圧計と違って液体ではありません。アネロイド気圧計は、内部が真空になった金属製容器が気圧の変化によって伸縮する現象を利用して、それを「てこ」で指針に伝えて気圧を表示する構造になっています。アネロイド気圧計の指示値を読む時は、針が軽く振動するようにガラス面を指先でノックしていますか?もし後輩がノックせずに指示値を読んでいたら、ノックするのが正しい読み方であることを教えてあげて下さい。

ついでに船員として知っておくべき気圧の知識をおさらいしましょう。標準大気圧はいくらですか?そうです1,013hPa(昔で言えば1,013mbar)です。この1,013hPaの世界で私達は生活しているのです。私達が圧力計で読み取る圧力の値はこの1,013hPaをベースとした圧力で、ゲージ圧力(Gauge Pressure)と呼んでいます。従って、ゲージ圧力が同じであっても大気圧が微妙に変化する場合、全体的な圧力は変化します。よって、厳密な圧力値が必要な場合は大気圧の変化を含んだ圧力で議論する必要があり、これを絶対圧力(Absolute Pressure)と呼び、以下の式で表されます。

絶対圧力 = ゲージ圧力 + 大気圧

例えば、1,013hPaで10kPaのゲージ圧力の場合、絶対圧力は1,013+100=1,113hPaです。

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