『外国人船員の雇用契約』の話です。
とかく日本人は働きすぎと言われます。働きすぎなのは日本企業で働く陸上の人達だけでなく、海上で働く日本人船員にも言えることでしょう。確かに日本人船員と欧州人船員の労働形態を見ても大きな差があるのは事実です。欧州人船員の場合は、基本的に乗船日数と休暇日数が同じです。4か月乗船4か月休暇。3か月乗船3か月休暇です。欧州諸国ではバカンスと称して、陸上の人達が1か月以上にも及ぶ長期休暇を取るのが当たり前ですが、欧州人船員は陸上のバカンス以上の長期休暇を取る権利を有しています。
欧州人のみならず外国人船員の多くが年間のうち半分乗船、半分休暇という待遇です。中には二人の船長が1隻の船の船長とC/Oの職務を交互に担当しているケースがあります。例えば3ヶ月交代で船長や航海士が乗り組む船では、当事者の二人が事前に打ち合わせてお互いが納得するタイミングで交代します。お互いの合意のもとに交代する時期が決定されるのです。一方、二人の仲が良くない場合や初対面の場合は、お互いがManning会社の配乗担当者へ希望を出して、Manning会社が調整することになります。
ある外国の港のLoading Masterの生活は1ヶ月間のターミナル勤務と1ヶ月間の休暇の繰り返しです。従って1年間の半分は遊んで暮らしていることになります。しかも自分の家からはるか数千キロも離れたところにありますが、毎月の移動の飛行機代・ホテル代・食事代も全て会社負担です。日本では考えられないぐらい恵まれた高待遇です。
先ほど紹介したように欧米船員の標準的な乗船パターンも非常に高待遇です。3か月乗船3か月休暇、4か月乗船4か月休暇というのが通常なので、彼らも1年間の半分は休暇です。一方、日本人がそれだけ休暇をもらっても果たしてお金と時間を上手く使いこなせるか疑問です。長期休暇になると遊び疲れて軍資金もなくなり、日常生活も怠惰になって乱れてくるかも知れません。
多くの欧州船員は私達と違って船会社に直接所属していない契約船員なので、契約が全てです。契約をよりどころにして船で働いているのです。その欧米船員の契約方法には2種類あり、「Standard契約」と「Permanent契約」です。乗船中のみ給与をもらって休暇中は給与がない契約を「Standard契約」と言い、乗船中と休暇中で同じ額の給料を受取るのが「Permanent契約」です。休暇中に給与がないStandard契約が一般的な契約なのかも知れませんが、Standard契約の場合では下船後に直ぐに他の会社へ移ってしまう可能性が高くなります。しかし、Permanent契約ですと、毎回同じ船に帰ってくることを前提に契約しており、乗船後の休暇に対しても給与が支払われるので他社への移動は少ないはずです。