安全維持はISMやSIREだけでは不十分、TMSAも必要です

今までに船の検査の話を数回しましたが、ここでは船が受ける検査ではなく、『船舶管理会社が受ける検査』の話です。

最近、「TMSA」という検査がタンカー業界やLNG業界では注目の的となっています。TMSAとは「Tanker Management and Self Assessment」の略です。英語の意味通り、TMSAは基本的には自社のタンカー管理制度の適切な運用及びその自己評価です。

しかし、実際にはSIREのように外部の者が客観的な立場で厳しい検査を行います。しかもSIREの対象が船であったのに対し、TMSAの対象はなんと、船舶管理会社そのものです。自己評価なので楽勝では?と思ったら大間違いです。BP、Shell、Exxon Mobil、Total等の石油メジャー会社がTMSAに基づいて船管会社を厳しくチェックするのです。最近も某船舶管理会社がTMSAに基づく検査を受けて、その結果が惨憺たる成績であったために、社内で大問題となりました。

SIRE Inspectionが船の品質や状態を対象にしているのに対し、TMSAは船舶管理会社自体の管理体制を検査対象としています。最近の船はISM Codeの遵守により安全レベルがある程度は向上し、安全運航を維持していますが、タンカーやLNG/LPG船ではISMだけでは不十分なようです。ISM Codeが運用されてからも依然として世界中で船の事故がそれほど減少はしていません。ISM Codeで船を規制するだけでは限界があることが判ったのです。

そこで登場したのがTMSAです。船だけに責任を押し付けるのではなく、陸も共同で安全管理を遂行する必要があります。TMSAの導入目的は船舶管理会社の質を良くするためというのは十分に理解できるのですが、TMSAの影響が船にまで及んで会社が安全管理体制を強化するために船への指示や締め付けが厳しくなるのは、船側としては少し辛いところです。

以上のことから2004年からはSIREのみならず、OCIMF主導の「SIRE」と「TMSA (2017年にTMSA3が発行)」の両方を満足させて初めて、世界(業界)の標準レベルの船舶管理会社及び管理船であると認められるようになりました。いわば、タンカー会社に課せられた安全管理遂行のための両輪です。SIRE/TMSA共に欧米の文化・発想に基づいたシステムで、日本人には理解し辛く、親しみ難いものですが、残念ながらこれらを無視してはタンカーやLPG/LNG業界の海運市場で商売をやって行けません。いずれせよSOLAS / MARPOL / STCW / IGC等の諸規定を満足するだけでは不十分で、SIRE/TMSAの要求を満たすことが、タンカーやLNGの最重要課題となっているのが管理会社及び管理船を取り巻く現状です。

そのTMSAの中で使用される言葉で「ケーピーアイ(KPI)」という言葉があります。もし、知らなければ名前だけでも覚えておいて下さい。KPIは「Key Performance Indicator」の略です。日本語では「主要業績評価指標(評価目標)」とでも訳せば良いのでしょうか、TMSAには多岐にわたる自己評価項目が定められています。その各項目で「何を実施すべきか?どの様に実施できているか?」を具体的に判りやすく説明しています。

各項目の目標となるものがKPIです。小学校の通知簿に「自分の思っていることを上手く話すことができる。」と書いている欄がありましたが、これがKPIです。例えばKPIの中で判りやすい数値目標としては、「オフハイヤーがゼロ」や「重大海難がゼロ」があります。私達が目標とするハードルをKPIと呼んでいます。いわば船舶管理会社の通知簿に用いる評価項目がKPIです。

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