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シンボル表示は分かりやすいけど、多過ぎては効果も半減

電気製品の操作ボタンの表示の多くは老人や子供が見てもその機能が解るように簡単なシンボルで表示されています。道路標識なども見た目で分かりやすいシンボルや数字で表示されています。同様に船内にも誰もが容易に理解できるようにシンボル表示が多数施されています。そんな『標識(Symbol)』の話です。

ISMシステムでは、誰が見ても機器の設置場所や取扱い方法が容易に理解できるよう掲示することが基本です。知識や経験の乏しい船員や明らかに能力の劣っている船員が乗り組む船では各所に掲示が必要なことは言うまでもありません。さらに、例えどんなに高い技量レベルの船員が乗船していても安全にかかわる設備に対してはプラカードによって一目瞭然にしおくことが安全運航対策の基本中の基本です。設置場所だけでなく、安全にかかわる規則や注意書きも同様に誰の目にも留まるように掲示しています。

そのため昨今はどの船もやたらめったら、あらゆるところに掲示物があふれています。掲示が多すぎて、船員は少々混乱気味というのが正直な感想です。ちょっと多すぎるのでは?と思っている人も多いのではないでしょうか。「過ぎたるはなお及ばざるごとし!」確かに何でもかんでも表示すると混乱を招いたり、注意力が散漫となったりして折角の表示の目的が薄れてしまいます。

その最たる例がIMOシンボルマークです。救命設備関係のものだけでは足らず、消火設備、Security関係、危険物関係と様々な種類のシンボルが船内に掲示されています。その種類の多さに乗組員は辟易とするところもありますが、IMOで定められた救命設備関連のシンボルは最低限でも掲示する必要があります。実際にこれだけ掲示が多いと、全てのシンボルの意味を完璧に答えられる人は少ないと思います。何の意味か理解できないシンボルを掲示しておくことは無意味ですが、シンボル掲示の最大の目的が救命設備や消火設備がある場所を示すためであると考えれば、多すぎるシンボルにも我慢せざるを得ません。

IMOシンボルを間違って表示している船がときどきあります。救命索が付いていない救命浮環に救命索付救命浮環のシンボルを表示していたり、自己点火灯の付いている救命浮環に救命索付救命浮環のシンボルを表示していたりします。一度、点検のために自船のIMOシンボル等の船内表示物をじっくり確認してみることも必要です。剥がれていたり、色あせて見えなくなっている掲示物はありませんか?意味を取り違えた掲示物や古くて無効になっている掲示物はありませんか?

IMOシンボルの使い方でよく勘違いしているのが数字の表示です。下写真の左は間違った使用例です。IMOシンボルの数字を個数の意味で使用していますが、本来この数字は番号を示すときに使用するIMOシンボルです。下写真の右の写真が正しい数字の使い方です。

右の写真では救命艇の1号艇と2号艇を示すために数字を使用しています。混乱しなければ左写真のようにIMOシンボルマークの数字を数量の意味に使用しても構わないと思いますが、厳しい検査員の場合、注意される可能性があります。

同じ設備が2つ以上同じ場所に積みつけられている場合には、その数量を表示する必要があります。例えば、ライフジャケットが2つ保管されている場合には、2個保管されている旨を表示しなければなりません。

執筆時点では数量の表記方法の定めはありません(IMOシンボルの番号シールを利用しても良い)が、IMOシンボルの数字を使った場合には救命艇の1号艇と2号艇との区別が付きにくくなるため、場所によっては民間の検査機関の検船で指摘を受ける可能性があります。

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