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航海士の技術と能力と技量 (その1)

「海技」、それは私達船員に必要であり、備えておくべき技能です。そこで私達船員が生業としている『技術・能力・技量』について考えてみましょう。

普段、教育訓練や人物評価において私達船員がよく口にしたり、聞いたりする言葉、「技術」「能力」「技量」。この3つの言葉の意味を深く考えたことがありますか?おそらく区別せずに混同して使用している人が多いのではないでしょうか。あるいは、言葉の違いを意識せずに何気なく使用しているのではないでしょうか。これら3つの言葉の持つ意味を整理してみます。少々私見が入っているかもしれませんが、私なりの解釈を以下に紹介します。

先ず、3つの言葉は英語でそれぞれ何と言うでしょうか? 以下の通りです。
「技術」・・・ Technique
「能力」・・・ Ability
「技量」・・・ Skill

広辞苑で調べてみると、以下の通りです。
「技術」 ・・・ 物事をたくみに行うわざ
「能力」 ・・・ 物事をなし得る力
「技量」 ・・・ 技術を行う腕前

私の解釈について、結論から先に言いますと技術×能力=技量という公式が成り立ち、技量は技術と能力の掛け算です。まず、「技術(Technique)」はいわゆる「技(わざ)」です。知識、経験、手順、要領、マニュアルという言葉で例えられるもので、人が物事に取り組むときに使用する道具(Tool)のようなものです。それは知識として頭の中に入っているもので、参考書のように読んで利用するものもあれば、便利で簡単に利用できるパソコンや機械から学ぶ技術もあります。さらに経験によって身につく技術もあります。下図の横軸に「技術」を引いてみました。

そして「能力(Ability)」はいわゆる「力(ちから)」です。理解力、判断力、推察力、洞察力、構成力、企画力、実行力、交渉力、応用力、忍耐力、継続力、管理力、伝達力等の言葉で表される個人の力(Power)のようなものです。能力は生まれ持っている「資質」でもあるし、日々の努力によっても向上できる「素養」でもあるのです。下図の縦軸に「能力」を引いてみました。

「技術」も「能力」もそれぞれ多ければ多いほど、高ければ高いほど、それに越したことはありません。使える道具(技術)がたくさんそろっており、優れた力(能力)があれば、自ずと良い仕事ができるのです。日頃からの地道な努力や工夫で「技術」を増やし、「能力」を高めることができます。そして3番目の言葉「技量(技能・Skill)」とは、自分に兼ね備えた「能力」によって、自分の持っている「技術」をどこまで使用できるかを総合的に評価する尺度に該当します。つまり横軸の「技術」と縦軸の「能力」から得られる面積が「技量(技能)」です。「技術」と「能力」を併せた総合的なポテンシャルを「技量(技能)」と言うのです。

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