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聞き慣れない警報音に戸惑わないためのアラームテスト

乗組員に注意を喚起して危険を知らせる音、『アラーム(警報)』の話です。

アラームは船内各所で鳴り響き、乗組員に異常を知らせてくれる重要かつ不可欠な機能です。機関室のMO警報をはじめ、General Alarm、火災警報、ガス警報、バラストタンク高位警報・低位警報、ビルジ警報、貨物部関連警報等々多種類の警報があります。この他にも普段、あまり鳴ることがない警報として、① Elevator Call、② Chamber Call、③ Hospital Call、④ Engineer‘s Callがあります。

これら4種類の警報は全て非常時の際に助けを求めるときに鳴らす警報です。「Elevator Call」はエレベーターに乗組員が閉じ込められたときに外部に知らせる警報です。「Chamber Call」も同じく冷凍庫のドアノブが壊れたり、ドアが凍りついたりして閉じ込められたときに外部に助けを求める警報です。そして「Hospital Call」は病院と同じで、病室にいる患者が誰かの助けを必要なときに呼ぶ警報です。

では「エンジニアコール(Engineer’s Call)」はどのような警報でしょうか?機関室において一人では対処できないような重大なトラブルが発生したときに機関士全員を緊急で招集するためのアラームがエンジニアコールです。皆さんはエンジニアコールの警報音を聞いたことがありますか?どこからどのような音で鳴るかを知らなければ、実際にエンジニアコールが鳴ったときに何の警報かわからず戸惑って、対応が遅れてしまいます。

ですから、毎月あるいは最低でも3か月に1回はエンジニアコールの作動テストを実施し、警報が鳴ることを確認するとともに、実際にどこでどのように聞こえるかを知っておくことが重要です。皆さんも自分の船のアラームの種類、アラームを作動させる場所、アラーム音が聞こえる場所、そして実際の音色を確認しておいて下さい。

ある船の話ですが、夜間にMO警報が鳴りました。ところが、ECRには機関長以外は誰も降りてきません。機関長が幾ら待てども当番の機関士が降りてこないのです。機関長は不思議に思い、公室をのぞいてみました。すると、何と当番の機関士が他の乗組員と鍋をつついているではありませんか。酒席に盛り上がってMO警報が聞こえなかったのでしょうか?自分が当番機関士であることを失念していたのでしょうか?自分が機関室へ行かなくても誰かが対応してくれると思ったのでしょうか?当然のことながら、機関長から厳しいお叱りの言葉があり、その当番機関士は当分の間、自主的に禁酒しました。MO警報が聞こえなかったという言い訳は決してできません。当番の機関士はいつ警報が鳴っても確実に聞こえる場所にいる必要があります。

私が今までに鳴ったのを聞いたことのないアラームと言えば、操舵機警報の「Phase Failure」です。長い船員生活で他の「Source Failure」、「Over Load」、「Low Level」は何度かありますが、「Phase Failure」は一度も聞いたことがありません。このアラームはステアリングモーターの三相交流電源に異常がある場合に鳴りますが、ステアリングモーターの三相交流電源が不調になることがほとんどないので、このアラームが鳴ることは非常に稀です。

皆さんはどうでしょうか?聞いたことのないアラームがたくさんあるのではないでしょうか?よく見ると船橋内でさえ多くのアラーム装置が付いています。操縦コンソールや電源パネルに付いているアラームの意味について全て理解していますか?航海士は当然のことながら、船橋内のスイッチ、計器、アラーム全てに精通すべきであり、完璧に理解しているはずです。

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