ペイント缶で切った傷は入れ墨のように一生消えません

今までにペイントの話がたくさん出てきましたが、ここでも『ペイント』の話をいくつか。

ペイントの種類をその成分から分類すると、ラバー系、ビニール系、エポキシ系、タールエポキシ系、エナメル系、ウレタン系、シリコン系等々たくさんの種類があります。それぞれに一長一短があり、価格にもかなりの開きがありますが、船体構造物や機器の種類・場所によって最適なペイントを選択して使い分けています。その他にも特別な用途に使うペイントとして、耐熱ペイント、ノンスリップペイント、水性ペイント、艶消しペイント等があります。

特に注意すべきペイントは、蒸気管等高温となる場所へ使用する銀色ペイントです。過去にも機関室内の高温部へのペイント塗装中に火災が発生したケースがあります。高温部への塗装は耐熱銀色ペイントを使用すべきことは言うまでもありません。しかし、耐熱銀色ペイントといえども塗装中には溶剤であるシンナーが気化し、非常に発火し易い状態となっているので十分な注意が必要です。誤って一般の銀色ペイントを高温部へ塗装しないようにペイントストア内では一般用銀色ペイントと耐熱性銀色ペイントは明確に区分しておく必要があります。

ペイントの種類と言えば、航海灯箱に塗装している黒色ペイントは普通の黒色マリンペイントではないことを知らない人がいるかもしれません。航海灯の乱反射を防ぐために艶消しの黒色を使用しています。艶消しペイントは英語で「Lusterless Paint」です。普通の黒色では灯火が航海灯箱内で乱反射し、そのために正規の到達距離でなくなってしまう可能性があります。ですから航海灯の周囲には艶消しペイントを塗るのです。

ペイント缶による怪我の話です。カッターのように鋭利な刃物で切った傷は直ぐに治り、傷が浅ければ傷跡はほとんど残りません。しかし、のこぎりで切った傷のように傷口がギザギザに引き裂かれた状態なった場合は傷跡が痛々しく残ってしまいます。経験ある人がいるかも知れませんが、ペイント缶に引っかかってできた傷がそれに該当します。

甲板部ではペイント缶を使用するとき、正規の丸い注ぎ口を使わず、ペイント缶の上部をスクレッパーで開けて使用します。使用する前にペイントを良くかき混ぜるために缶の上部を大きく開けるのです。すると開けた蓋の部分のふちがギザギザになっています。その蓋に誤って腕や足が当たって切ってしまうと、パックリと傷口が割れて、完治するにも日数がかかり、傷跡が何年経っても残っています。私はペイント缶で切った傷が腕に1箇所、足に1箇所あり、その切り傷の跡が今でも残っています。今となっては懐かしい思い出ですが、当時は大きく口を開いた傷口から流血するのを見て慌てたことを覚えています。

エアーを使用しているのに、なぜエアーレスと呼ぶの?ドライドック作業は船底に始まり、船底に終わる

ちなみに、皆さんも知っていると思いますが、のこぎりの刃の向きが日本と外国では違っているのを知っていますか?日本は伝統的に引いて切るように刃が手前方向に向いています。日本ではのこぎりは引いて切る道具という認識です。ところが西洋はもちろんのこと、フィリピンやインドネシアでも押して切るのこぎりが一般的です。従って刃が前方を向いており、のこぎりを押して切ります。ですからのこぎりを引くという表現は日本独特のものかも知れません。外国ではのこぎりは押すものです。

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