乗組員以外の誰にも決して教えられないこと

安全な海域ばかり航行している船員は、貨物や人命への外部からの攻撃に対する危機意識が相当希薄になっているかも知れません。私達の命や船・貨物を守るための大切な『Security(保安)』の話です。

世界中でテロ活動が活発になってかなりの年月が経ちますが、近年は陸上だけでなく船におけるテロ対策が確実に強化されました。その具体的な例の一つとして、2004年7月より改正SOLAS条約(海上人命安全条約)およびISPS Code(International Ship and Port Facility Security Code)が発効されました。皆さんもISPS Codeについては十分に理解していると思いますが、船内に保管しているSSP(Ship Security Plan)を読んだことがありますか?日本語で「船舶保安規程」と言いますが、SSPにはどのようなことが定められているでしょうか?

もし、一度も読んだことがなければ、SSO(Ship Security Officer:多くの船では船長)が船長室に保管しているはずですから、是非一度、船長(SSO)に頼んでSSPに目を通して下さい。SSPには本船のSecurityに関する情報が沢山含まれているため、コピーしたり部外者に見せたりすることは厳禁です。そのため、どの船でも船長室に鍵をかけて保管しているはずです。Confidentialな記録は、部外者には絶対に見せてはいけないもので、例えそれがPSC検査官であっても開示できません。(SSPの原本は会社に、写しが本船で保管されています)

あるSIRE Inspectionで検査員が2/Oに質問しました。

本船のSSASの発信スイッチはどこにありますか?

すると、2/Oは真剣な顔で発信ボタンのある場所を説明しました。検査員に尋ねられたのですから、答えて当然です。しかし、検査員の返答は「SSASの発信ボタン場所を部外者である私に教えてはいけません。発信ボタンの場所は知っているけれども教えることは出来ませんと言うべきです。今のは、ひっかけ問題です。」確かにそうです。SSPを部外者に見せてはいけないのと同じように保安対策の具体的な内容も部外者に教えてはいけません。Security事項はすべて部外秘です。

ところで、船舶保安で重要なSSAS(Ship Secutiry Alert System)は機械ですから、壊れることがあります。毎月1回、船陸でSSASの作動テストを実施しますが、船から発信した信号を会社が受信できないというトラブルがときどき発生します。SSASが不調では実際の緊急時に役にたちません。そのためにも月例の作動テストは重要です。私が経験したSSASトラブルの原因は、アンテナの不良、バッテリーパックの不良、基板の不良の3点です。どれも予備品を受領して交換すれば復旧することができました。

船舶保安操練(Ship Security Drill: ISPS Code Part A 13.4)も義務付けられていますが、注意すべきことがあります。25%以上の乗組員が交代した場合、出港後の24時間以内に救命艇操練及び防火操練を実施する必要があります。同様に、過去3か月、その船で一度も操練に参加したことのない者がいて、乗組員が25%以上が交代した場合、交代後1週間以内にShip Security Drillを実施し、可能性のある全ての脅威の要素を検討する必要があるのです。このことはISPS Code Part B 13.6に規定されていますが、うっかり忘れている船が多いようです。

参考 船舶保安システム(ISPS)Class NK

 

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