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エンジン・ア・ラ・カルト(その1)

様々な『機関システムに関する基礎的な話』です。

「機器のことは機関部が担当しており、すべてを機関部にお任せするので、航海士の私には関係ありません。」という姿勢・態度ではいけません。視野が広く懐の深いベテラン航海士となるため、そして船全般を統括・管理する強靭な船長、さらに陸上から安全運航をサポートする優秀な海技者になるためには、機関に関する最低限の知識も必要となります。以下に知っておきたい機関に関する基本事項をいくつか紹介します。

回転数

端的に言うと「ディーゼル船は回転数を一定に制御する機関」、「タービン船は出力を一定に制御する機関」です。ディーゼル船ではプロペラシャフトの回転数を監視し、常に設定回転数を維持するよう燃料噴射量を調整しています。ディーゼル船では荒天になると負荷が増加するに従い燃料が増大します。機関士がよく「燃料が突っ込んでいる。」というときがこの状態です。一方、タービン船はタービン入口の蒸気圧を監視し、常に一定圧力となるよう蒸気量を調整します。結果的にはプロペラ出力が一定となるよう制御していることとなります。

但し、タービン船でもテレグラフのS/B領域では、回転数制御となります。仮にS/B領域が出力一定制御ならば、負荷が変動するたびにHalf AheadやSlow Aheadの回転数が変化し、速力が増減して港内操船に支障を来たします。また、タービン船では実回転数に見合った制限トルク値があるので、トルクリッチに近づくとトルクを減少させるために回転数を下げます。荒天下のトルクリッチな状態で無理して回転数を下げずに航行し続けると、シャフトに過大な応力がかかり、重大な損傷が発生する可能性があり非常に危険です。

「主機馬力の算出方法」の話を一つ。ディーゼル船の馬力はシリンダーカバーに測定装置を取り付け、足袋形線図なるものを作成し、その面積を計算式に代入することによって馬力(図示馬力)を算出することができます。一方、タービン船の馬力算出方法はディーゼル船とは全く異なり、プロペラシャフト(中間軸)の捩れ量を計測し、それを計算式に代入することによって馬力(軸馬力)を算出します。

ちなみに、船橋前面のエンジン回転数指示計の盤面にあって、ぐるぐる回転している小さな針を何と呼ぶか知っていますか?答えは「Telltale(テルテール)」です。英語辞書で見ると「告げ口をする人」という意味の他に「(舵角)表示器」の意味があります。テルテールの回転する動きがまさにシャフトの実際の動きなのです。ある船で船橋からECRへ「R/Upになったので、テルテールの電源を切って下さい。」と連絡すると、電話に出た若い3/Eが「テルテルってなんですか?」と聞き返してきました。思わず笑ってしまいましたが、「Telltale」という呼び方は機関士にとっては余りポピュラーではないのかも知れません。

ドレントラップ(Drain Trap)

「ドレントラップ」は蒸気ラインやエアーラインのもどり側に設置されており、文字通りドレンを捕まえる役割をしています。蒸気ラインの場合、蒸気をそのままの高温状態で返すと不具合を生じるので、凝縮してドレンとして低温の液体(水)にして返します。蒸気がDrainに変わって容器内に溜まってくると球体(下写真)が浮いてドレンが排出される仕組になっています。

エアーラインのドレントラップも同様にエアー中の水分(ドレン)が溜まってくると球が浮いて排出される仕組になっています。

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