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エンジン・ア・ラ・カルト(その9)

Steam Off

LNG船(タービン船)ではM/Fast & F/Eng.の後、機関部には安全確認のために重要な作業があります。それは「主蒸気弁の閉鎖」です。英語では「Steam Off」と呼びます。主蒸気とはMain Turbineへ送られる蒸気のことです。過去に停泊中に主蒸気がタービン内に漏れ出して、プロペラが回転して船体移動を誘発し、係船索切断の重大事故を起こしたLNG船もあります。

そのため、係留作業完了後、Try Engineまで主蒸気弁は確実に閉鎖しておく必要があります。甲板部はSteam Off後に陸上ラダー取り付け作業を開始するので、今か今かと機関部からの「Steam Off」の連絡を待っています。

ボイラーバーナー (Boiler Burner)

皆さんはボイラーのバーナー数を意識したことがありますか?タービン船では航海士といえどもボイラーバーナー数を把握しておく必要があります。ボイラーのバーナー数は船によっても異なりますが、両缶に3本ずつのバーナーが装備されているのが普通です。そして主機負荷(回転数)に見合った必要な蒸気量の大小によって、適宜その本数を増減しています。

ETA調整のための回転数の少々の増減ならば、ボイラーのバーナー数を変更する必要はなく、機関長や1/Oが1人でECRから簡単に調整できます。しかし、回転数の大幅な増減となると、ボイラーのバーナー数を変更する必要があり、そのための作業は機関長や1/Eだけではできません。バーナー数変更作業には多くの機関部員がS/Bする必要があるのです。

そのため、Turbine船の場合、自分の船のバーナー数が変更となる回転数(船速)はどれくらいかを航海士は把握しておく必要があります。また、タービン船の場合、ガス専燃状態からバーナー数を増やすためには、一旦FOバーナーにも点火する必要があります。さらに、S/B Eng.では必ずFO燃焼が必要となるため、ガス専焼で入港する場合はガスとFOの混焼である「Dual Burning Mode」に変更する必要があります。

ちなみに、ボイラーで燃えている炎の色を見たことがありますか?FO燃焼の炎の色とGas燃焼の炎の色では全く違います。機会があれば実際に自分の目で確かめて下さい。FO燃焼時はオレンジ色がかった赤い炎ですが、Gas燃焼時は家庭のガスコンロの炎と同じように青白い炎です。

アシスト蒸気

飲料水の消費量は0.5~1.0トン/日です。では清水(ボイラー水&雑用水)の使用量はどれぐらいでしょうか?船によって、また、清水を使用する作業の有無によってかなり増減がありますが、大型LNG船でおおよそ20~30トン/日です。従って造水器が30 トン/日の能力がないと、清水不足になります。また、タービン船の場合、燃焼モードの違い(GAS専焼とFO専焼)によってボイラー水の消費量が約10トンもの差を生じます。

FO燃焼時の方がボイラー水を圧倒的に多く使用するのです。その理由は「アシスト蒸気」です。意外なことですがFOをボイラーで燃やすときには空気だけでなく、蒸気を混ぜて噴霧させるときれいに燃焼するのです。その蒸気を「アシスト蒸気」と呼び、その蒸気を作るためにボイラー水が多量に消費されることになります。一方、GAS燃焼ではアシスト蒸気を使用しないため、ボイラー水の使用量が少なくて済みます。

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