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鉄の塊が体を直撃する可能性がある危険な作業

係船索がウィンチドラムで滑らないように所定のブレーキ力で保持する係船機。その『ブレーキ』の話です。

ある船でブレーキテストを実施したときのことです。Brake Test Kitをウィンチドラムに取り付けて、油圧ジャッキで圧力を徐々に上げていき、ウィンチドラムが滑る圧力を確認する作業です。(関連:『係船機のブレーキ』の話

ところが、規定の力の5~6割でウィンチドラムが滑ってしまいます。何度やっても規定の圧力の半分程度の圧力で滑ってしまいます。よくよく調べて見ると、Test Kitを取り付けるウィンチドラムの場所を間違えていました。ウィンチドラムの所定位置と逆側に取り付けていたのです。ジャッキの力がブレーキ力の働く回転方向にTest Kitを付けなければいけないのを逆方向に力がかかるよう取り付けていたのです。

逆側に付けてテストするとBrake力が6割程度となり、いくらブレーキをしめても所定のブレーキ力を得ることができません。最近はTest Kitの設置場所をマーキングしている船が多く、そうすれば間違うこともありません。また、油圧ジャッキを所定位置(補強されているデッキ上)に置かずに圧力をかけると甲板が凹む危険性もあります。そういう意味でも油圧ジャッキの位置をマーキングすることは重要です。1年に1回程度の使用頻度のため、Brake Test Kitがどこに保管されているか誰も知らず、捜すのに苦労することもあります。

ブレーキテストに関する話をもう一つ。ブレーキテストを実施するときには思わぬ危険が潜んでいます。かなり昔の話ですが、Brake Test Kitを装着し、油圧ジャッキで圧力を上げている途中にTest Kitが外れて、油圧ジャッキを操作していた甲板手の足元にTest Kitが飛んできました。油圧ジャッキには数百キロの力がかかっており、Test Kitにかかる力が横方向にそれたのです。Test Kitは鉄の塊です。もし甲板手の足を直撃していたら骨折等の大怪我は免れなかったでしょう。

係船索やタグラインのSnap Back Zoneと同じで、テストキットが飛んでくる方向に自分の位置を置いてはいけません。ルーティーンワークで度々行う作業では各人がその手順に慣れていますが、ブレーキテストのように1年に1回程度しか実施しない作業では不慣れな作業員が行うこととなるので、どこかに危険が潜んでいるか察知するのが難しいものです。ですからブレーキテストのように1年に1回程度の作業でHigh Riskを伴う作業については、OJT、リスクアセスメント、KYT等十分な準備が必要です。

タグラインをボラードに取るときも注意すべきことがあります。ボラードには2本のポストが立っていますが、ボラードへラインを取るときに注意すべきことがあります。

それはボラードの2本のポストへ8の字でラインを取るときです。ボラードの2本のポストに8の字にラインを取ると各ポストの強度が半分になってしまうということです。ラインを取るときに最初のポストに一巻きせずに8の字に取るとポストへ2倍近い力が働いてしまうのです。ですから8の字でラインを取るときの正しい取り方は、最初のポストに一巻き、又は二巻きしてから2本目のポストに8の字に巻きはじめるようにします。そうすれば各ポストに力が分散して正規の強度が保持できます。

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