バラスト作業で誰もが経験するやっかいな『エアーがみ』の話です。
タンカー経験者には言わずもがなですが、ポンプが一度エアー(ベーパー:以下省略)をかむと、エアーを抜くのに大変苦労する場合が多々あります。遠心力ポンプなのでエアーがポンプケーシング内に充満してしまうとポンプはバラスト水(カーゴ)を排出できなくなります。
タンクレベルが低くなってベルマウスからエアーを吸い込まないよう注意していても、ときにはどうしてもエアーがライン内に流入することがあります。タンクからポンプまで真っ直ぐな形状のパイプラインであればエアー抜きも容易ですが、曲がりくねった複雑な形状のライン回しでは、ところどころにエアーが残っており、それを完全に取り去るのに苦労します。一旦エアーが抜けたと思っても直ぐにまた、エアーがみとなってしまいます。
私の経験では、Ballast Pumpのエアーがみを解消する秘訣は、思い切った大胆さです。Sea Suctionからタンクへ、又はヘッドの高いタンクから空タンクへ大量に海水を逆流入させることです。これによってライン内のエアーを完全に取り除きます。エアー抜きを中途半端に終わらせると、ライン内に残っていたエアーが再びポンプケーシングに入り込むことが少なくありません。
Cargo PumpではSea Suctionを開けることができないので、ヘッドの高いCargo Tankの Suction Valveを開けてベーパーを取り除きます。Ballast PumpならばSea Suctionから海水を導いても問題ないでしょう。Pump回りのエアーを抜いたつもりでもラインの先端部分にエアーが残っていることが多く、一度正常に戻ったサクション圧が再びエアーがみの状態となるのです。折角ほとんど空になったタンクへ再びBallast水を入れるのは抵抗がありますが、思い切って大胆になることです。そうすれば、意外と早くエアーがみを解消できるはずです。
バラスト排出作業も終盤になると、エアーをかませないためには、Delivery Valveを絞る方向へ、又はTank Suction Valveを絞る方向へ調整することとなりますが、ここで一つ注意しなければならないのは、Ballast Tankの実際のレベルがどれくらいあるかです。Cargo TankのLevel表示計は非常に重要なため常に調整して誤差はほとんどありませんが、Ballast Tankの表示計の誤差は10cmや20cmは当たりまえと考えていたほうが良いでしょう。
従って、レベル表示を見てタンクレベルが、まだ50cm以上あると油断していると、実際は30cmかもしれません。そして、突然エアーがかんでしまってバラスト作業が遅れてしまい、予定時間を過ぎても荷役作業を終了できない事態となります。そんなときも慌てずにエアーを抜いてリカバリーをすれば良いのです。但し、バラスト作業遅延が荷役作業遅延につながる可能性があるということは常に頭に入れておき、出来る限りエアーをかまさないようにするのが基本です。
話は変わりますが、バラスト作業するときにパイプの太さ(径)を把握していますか?メイン管の太さ(径)、枝管の太さ(径)、バラストポンプ回りの配管の太さ(径)、それらにより許容流量が決まります。
径が2倍になれば流量はどれだけ増えますか?
流量は面積の2乗に比例するので、ざっと4倍になります。600mm径のパイプは300mm径のパイプの4倍の流量となります。私は、「径の大きさが1割増しになると、面積は2割増し、体積は3割増し」と覚えています。これを頭に入れて置くと流量計算に役立ちます。