略してバタ弁と言われる『バタフライバルブ(Butterfly Valve)』の話です。
タンカーやLNG船以外の船種でもバラスト配管のバルブに多く採用されているバタ弁ですが、その構造を図面で見るか、または実際に開放整備して実物を見たことがありますか? 船で使用されているバルブにはバタ弁以外にも様々な種類の弁があります。特に船で多く使われているのは、Glove Valve(丸型弁)やSluice Valve (Gate Valve)です。それぞれのバルブがどんな形状・構造になっているかを知らない人は、一度自分で図面等を引っ張り出して調べてみて下さい。できれば、甲板部や機関部がバルブの開放整備をしているときに実際にバルブ内部を見るのが最も理解がしやすいはずです。
バタ弁で注意することは、その流量の変化特性です。バタ弁は始めの開度10~20%では弁体の抵抗が大きいけれども、開度が70%ぐらいになると80%も90%もほとんど同じ流量となります。言いたいことは、バタ弁の場合、弁開度を50%にしても流量は50%ではないということです。バルブ開度のインジケーターを見て、開度(%)と同じ流量(%)が流れていると思ってはいけません。バタ弁の開度(%)と流量(m3/h)は一次(直線)比例ではありません。バタ弁では開度0%から開度60%ぐらいまでの間の流量変化が特に大きくなっています。
バタ弁をOpen/Shutしている手さばきで、その航海士がベテランか新米かがわかります。例えばベテラン航海士がバタ弁をOpenするときは、開度0から60~70%の間は非常に慎重に行い、開度70%あたりをすぎると大胆にOpenします。それを慣れていない航海士が行うと100%になるまで同じような調子で開けていきます。
Shutするときも同じです。ベテランは大胆に60~70%までバタ弁を絞り、そこから慎重になります。例えばFull OpenからShutするとき、圧力計の変化を見るとFull Openから80%ぐらいまでは、圧力計の針は殆ど動かないはずです。ということはその間は殆ど流量に変化がないということです。バタ弁の流量変化特性を理解していれば、メリハリが利いたスムーズな弁操作ができるようになります。
余談ですが、Valveというものを決して信用してはいけません。完全にシャットしているつもりでも漏れていることが少なからずあります。そのため「Valveは漏れるもの」と考えて扱わなければいけません。絶対に漏れて困る場所は常に「ダブルシャットが基本」です。さらにスイング式のノンリターンバルブ(逆止弁)は漏れているのが普通と考えておいた方が良いぐらいです。
バルブ操作による大事故と言えば、大昔の話ですが、機関部が海水ポンプのストレーナー開放掃除作業を実施していたときに発生したことがありました。ストレーナーカバーを開放したままの状態で、船外から海水を取り入れてフラッシングをするために電動(油圧?)式のSea Suction Valveを少しOpenしました。ところが、なぜかValveが固着して動かなくなり、Shutできなくなってしまったのです。そのため、機関室に大量の海水が流入し続け、機関室が全水没となり、その船は港まで曳航されるという大事故となりました。「ダブルシャットになっていない船外弁の開閉は非常に危険である。」ということを忘れないでください。