船のペイントその他の『消耗品・船用品』の話です。
皆さんは「チョーキング」という言葉を知っていますか?英語でいうとChalking、まさに学校の黒板に書くときに使うチョークのように、塗装表面を手で触ると粉が手について真っ白になる状態です。要はペイントの質が劣化し、表面が粉状になることで、通常、どんなペイントも劣化すると少しはチョーキングするものですが、ある船では塗装してたった数ヶ月でチョーキングしてしまいました。そこで、ペイントが粉状になるのがあまりにも早すぎるため、ペイント会社へ強くクレームしました。
ところで、ペイント1缶の値段を把握していますか? 航海士は船用品や予備品のおおよその価格も把握している必要があります。値段が高すぎて予算オーバーとなれば、ときには整備・保守計画を変更せざるを得ない場合もあります。船用品注文を何度か経験していれば、おおよその価格を把握できるようになってくると思います。ペイント価格は種類にもよりますが、通常のペイントで20L缶が7千円~1万円/缶、5Lが2千500円/缶、高価なペイントが20L1万5千円~2万円/缶と考えておけばよいでしょう。もちろんこれ以上に高価なペイントもありますが・・・・
どの船にも年間予算があります。1年間に船用品代金、予備品代金として使える金額です。私企業ですから、予算が無尽蔵にあるわけではありません。予算が余ったからといって無駄な物を買って使い切る必要もありません。もちろん安全性を阻害してまで重要な船用品や予備品をカットしてコストセーブする必要もありませんが、無駄なものを注文しないよう努力はすべきです。自分の乗船している船の大まかな予算・実績を知り、トータルコストの管理・調整も航海士としての重要な仕事です。
どの船も年に3、4回の船用品補給があります。年間予算を補給回数で均等割りして1回あたりの予算の見当をつけて注文しますが、どうしても1回目、2回目の船用品を多めに注文する傾向があり、年末の最後の船用品注文のときに予算が足らなくて困っている船が多いようです。可能ならば、1回目、2回目の注文量は少し抑え気味にするぐらいで丁度かも知れません。
毎年度末に会社へ報告する書類として「船用品期末報告書」という書類があります。船内にある消耗品や備品の残量を会社へ報告するものです。この報告書は会社が船内にある船用品を会社の資産として扱って、税務処理するために必要です。しかし、最近では税務処理方法が変更されたのか、残高額は不要になりました。その後、ある管理会社では期末報告書の作成・提出を取りやめました。ただでさえ船内には書類があふれているのですから、やめる勇気・決断が必要です。会社にファイルしているだけの書類を作成するために若い航海士や機関士が多大な労力を使うのは、無駄なことです。ただし、船用品期末報告書を作成することにも利点があります。それは航海士が船用品の在庫を調べるために苦労することです。苦労することによって様々な船用品の名前や使用方法を航海士自らが理解することができる良い機会です。