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液体の流れにはウォーターハンマーの危険が潜んでいる

誰でも簡単にできますが、実は奥が深く、恐ろしい危険が潜んでいる『バルブ操作』の話です。

あるとき、バラスト漲水作業後にバラストラインに残圧があるのを見つけました。そこでバラストポンプのサクションバルブを何気なくOpenしたところ、ライン内残圧によりポンプサクション圧が2 kg/cm2まで上昇し、Highアラームが鳴りました。

過去に某LNG船で、カーゴライン内残圧が高いため圧力を抜こうとバルブをOpenしたことが原因でカーゴポンプが損傷するという大事故がありました。あらゆるバルブをOpenする時には、ライン内残圧の有無に注意し、高い残圧があると予想される場合は、必要なValveをゆっくりOpenして残圧を落とす必要あります。これは航海士の常識として覚えておいて下さい。いや、頭で覚えるだけでなく、体で覚えて下さい。

タンカーでカーゴポンプのケーシングを破損する大事故の原因の多くが、「ウォーターハンマー現象」です。ポンプ内がVacuumとなっているところへサクションバルブを急激にOpenすると、Line内を液体が高速で走りケーシングに激しく衝突して破損するというウォーターハンマー現象が発生するのです。ウォーターハンマー現象はライン内のSurging(サージング)圧が発生することによっても起こります。高速で管内を流れている液体はバルブを一気に締め切ることによってふん詰まり状態となりライン圧が急激に上昇し、バルブやパイプを損傷させる可能性があります。

液体貨物を操作する者として、Valve操作を行うときは、何気なく操作するのではなく、ウォーターハンマーの危険性を常に念頭に置き、注意深く操作する習慣をつける必要があります。ウォーターハンマーによる大事故は忘れた頃に再発しています。知識として知っているだけでは意味がありません。体で覚えて、バルブを操作するときは必ずライン内の圧力を確認する習慣を付けましょう。そのために圧力ゲージがあるのです。

ある船ではバラストラインのウォーターハンマー現象による事故防止のための対策を提案していました。ソフト的な対策だけでは、ヒューマンエラーは根絶できないので、ハード面でカバーする対策です。その対策はバラストライン主管の圧力をモニターできるよう圧力計を設置し、負圧になると警報で知らせるようにします。さらにVacuum Breakerにより過負圧になると安全弁が開いて負圧をなくすというものです。この対策は大事故につながるウォーターハンマー現象を根絶するために非常に有効であると思います。

Valve操作だけでなく、カーゴポンプ操作も要注意です。タンカーのカーゴポンプはDelivery Valveの締め切り運転ができますが、LNG船のカーゴポンプは締め切り運転ができません。無理すれば締め切り運転も可能なのかも知れませんが、ベアリングを損傷する可能性があり、LNGによる冷却効果も期待できないため、LNG船では締め切り運転厳禁です。

そのためLNG船の場合、Discharge Valveを10~20%程度開けてからポンプを始動させます。通常の遠心力ポンプですと、Delivery Valveを締め切ってポンプを始動させるのが常識です。Delivery Valveを開けて液をラインに流すことによりウォーターハンマーやタンクのオーバーフロー等様々な危険があるのです。

タンカーのカーゴポンプの場合、締切運転が最も安全な状態と言えます。ところが構造上締め切り運転ができないLNG船のカーゴポンプは始動するといきなり液がDischarge Valveからラインに流れ始めます。LNG船のカーゴポンプは定回転でDischarge Valveの開度で流量調整を行います。カーゴポンプを始動させるときに一気に回転数が急上昇して所定の回転になると、ライン内の液が急激にラインを通過してNon-return Valveにものすごい衝撃力で衝突します。

その衝撃力を極力なくすためにカーゴポンプを始動するときにゆっくりと回転数を上昇させる制御機能を装備しています。この制御回路を「ソフトスターター」と呼んでいます。ソフトスターターが付いていないカーゴポンプでは起動時にものすごい衝撃力を生じます。液が一気に流れ出し、Non Return Valveに衝突するときにドームトップにスタンバイしている人の体が数センチも浮き上がるほどの衝撃力が発生するのです。液体を流す作業にはウォーターハンマーという危険が潜在していることを絶対に忘れないでください。

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