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異常を知らせてくれる警報も一歩間違えれば、狼少年と同じ

船内の多くのタンクに設置されている『レベル警報装置』についての話です。

ビルジウェルやカーゴタンク、あるいはFO、LOタンクには高位レベル警報装置(High Level Alarm)が装備されています。さらに必要なタンクには低位レベル警報装置(Low Level Alarm)も装備されています。レベル警報のタイプで最も一般的なフロート式では、水位が上昇してフロートまで到達すると、フロートが持ち上がりアラームを鳴らします。では、皆さんは高位レベル警報装置にタイマーが入っていることを知っていますか?

もしタイマーが入っていなければ、液面の揺れによって一瞬のフロートの動きを感知して誤警報を鳴らすこともあります。また、頻繁に警報とリセットを繰り返すこともあります。これを防ぐために数秒間、数十秒間の適当な間は警報が作動しないようタイマーが設定されています。フロートが一定時間持ち上がった状態で、初めて警報が作動するのです。

警報で注意することは、誤警報が頻繁になるような場合、あるいは普段、見慣れない警報が鳴った場合です。火災探知機の調子が悪くて、頻繁に誤警報が鳴るときがあります。そのような状況下では、「ああ、また誤警報が鳴っている。」と思い込んでしまい、現場確認という初期動作を怠る可能性があります。まさに狼少年状態です。このようなときに実際の火災が発生していれば、初期消火で大事に至らないはずの火災も大火災になってしまいます。火災警報への対応に手抜きは絶対に許されません。火災警報作動時は迅速な現場確認が基本中の基本です。

さらに、警報が頻繁になるからと言って警報機能にReposeをかけるときも要注意です。そのときは警報を鳴らなくすることが妥当かも知れませんが、その後Reposeをもとに戻すことを絶対に忘れないようにしなければいけません。Reposeした警報を表示する等適切な処置を行ってからReposeして下さい。鳴るべき警報がならずに大事に至る事があり得ますので、Reposeすることは危険が潜む措置であると認識すべきです。

また、機器・装置の温度や圧力が高くなって警報を発しても、自分で勝手に「高温高圧になるはずがない。」と思い込んで警報を無視することも絶対に行ってはいけないことです。ある船でパイプ内の圧力が高くなり、警報が鳴りましたが、「まさか異常が発生しているはずがない。」と思い込み、警報を止めただけで現場状況の確認をしませんでした。ところが実際にはパイプ内が異常に高圧となり、パイプが曲損するという大事故が発生しました。このときも異常圧力に早急に対応して、直ぐに現場確認・原因調査、そして減圧対策を講じていれば事故は防げたかも知れません。

警報といえば、油圧ラインのフィルター頂部に付いている緑色のIndicatorも警報の一種です。下写真のように通常は緑色をしていますが、油圧ラインのフィルターがゴミにより目詰まりしてくると赤色に変化して私達に注意を促します。この部分に赤色が見え始めるとフィルターが汚れているので開放掃除が必要です。

フィルターが汚れると緑色が赤色になる原理を簡単に説明すると、通常は緑色の棒に赤色の環が見えない状態まで沈んでいます。磁石とスプリングの力でバランスを保っているのです。そしてフィルターが汚れて詰まってくると油圧ラインの入口側と出口側に圧力差が生じます。出口側の圧力が弱くなるので、スプリングの力が磁石の力に勝るようになり内部の磁石棒が上昇します。すると磁石が赤いリングに近づくため、赤いリングが緑色の棒の周囲に浮き上がってくるのです。言葉で説明してもイメージし難いかも知れませんので、機会があれば実物の内部を見て理解してください。

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