相手に対してほんとうに申し訳ないという思いで『謝罪するときの態度』についての話です。
ある人が言っていました。「謝るときは真剣に謝りなさい。」 失敗をした後に「ごめんなさい。」とニヤニヤと愛想笑いをして謝る人がいます。(正直に言うと私もその傾向大です。)しかし、相手が真剣に困っていたり、激怒しているときには、そのニヤニヤ笑いは大変失礼で、相手の気持ちを逆なでするかも知れません。
謝る側がニヤニヤ顔では怒る側の怒り狂った心はきっと静まることはないでしょう。逆に相手の怒りが増幅するかも知れません。謝るときは真摯に、かつ素直に心の底から謝るべきです。そうすれば、深謝の気持ちが相手に伝わり、きっと許してもらえることでしょう。例え許してもらわずとも自分の反省する気持ちに自分自身が納得できるはずです。
逆もまた真なりです。「叱るときは真剣に叱りなさい。」と言えるのではないでしょうか。叱ることには相当なエネルギーが必要です。ときには相手を傷つけることになり、要らぬ摩擦を生じたり、誤解されたりもします。しかし、感情の赴くまま怒るのではなく、相手のことを慮って叱ることは大切です。実際には「言うは易く行うは難し」で、感情的に怒る人は沢山いますが、冷静に相手・部下のためを思って叱ることが出来る人はそうはいないはずです。
日本人は温情主義的な人が多い民族と言われます。悪く言えば、ことなかれ主義、良く言えば、寛大な心を持った民族。恥ずかしながら私もこの部類に属する人間で、叱ることが得意ではありません。しかし、部下が仕事を怠けたり、何度やっても同じ過ちを繰り返したり、約束したことを守らなかったりした場合、厳しく叱らなければならないときもあるはずです。他人を叱るということは、自分自身の心を鬼にして、悪役に徹する必要があり、非常にエネルギーがいることです。部下のためにこそ、叱る勇気と覚悟を上司は持っていなければいけません。もちろん、ムチだけでなく、アメとムチの良好なバランスの上で叱ることが前提です。
昔インド洋のドンドラヘッド沖を航行中のある船で起こった出来事です。付近の航行船(日本の某船社の運航船)からVHFで呼び出され、本船が分離航路を逆方向へ航行していることを指摘されました。それに対して何を思ったのか航海士は逆切れして、下品な暴言で相手を罵りました。すると後日、その船社から正式に本社宛に抗議の電話が届いたそうです。「おたくの船員のマナー教育はどうなっているのですか?」という抗議です。相手に対して適切な注意やアドバイスをするならば問題ありません。しかし、ただ単に相手を侮辱したり、からかう言動はもちろん社会人としては失格です。しかも相手の顔も見えないVHFで好き放題の暴言は許されることではないでしょう。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあります。あることが思いもしないことに影響を及ぼしていることの例えです。つまり風が吹くと道で土埃が舞い上がり、通行人の目に埃が入って目の不自由な人が増える。目の不自由な人が増えると、その人達の多くが三味線を弾く稼業につくので三味線がよく売れる。三味線を作るために猫の皮が必要となり猫が減る。猫が減ると、ネズミが増えてしまう。ネズミが増えると多くの家庭にある桶をかじってしまう。そのため桶屋が儲かるのです。一見、風が吹いただけでなぜ桶屋が儲かるか理解できませんが、めぐりめぐって思わぬところに波及していることは私達のまわりにもたくさんあるのではないでしょうか?相手を侮辱する行為も回りまわってきっと自分に戻ってきます。自分の品格をおとしめる行為は慎みましょう。そして、寛大な許す心と厳格な叱る心のバランスを取りましょう。